SMILE!
2
紅の棟に入り部屋の前まで行く。扉は開いていて、中を覗くと隠岐が窓際に立って外を眺めていた。
初めてちゃんと制服来ているのを見た。他の皆もそうだけど。
「…隠岐、」
声をかけると、隠岐は振り向く。
隠岐の元へ行くと、花束を渡された。卒業生が貰ったものだ。
「お前にやる」
「…いいのか?」
「俺には育てきれない」
「…ありがとう。あ、流星が写真撮ろうって」
隠岐の眉間にシワが寄った。ぽつりとめんどくせえと呟く。
「……最後、だから」
「そうだな」
隠岐の手が伸び、おれを抱き寄せる。
「…隠岐、」
「誰にも触らせるな。お前は俺のだ」
「……ん」
背中に腕を回すとキスをされた。
こつんと額同士がぶつかり、見つめ合う。
「…卒業、おめでとう」
「ああ」
離れた隠岐に手を取られ、引っ張られた。
「写真、撮りに行くか」
隠岐の言葉に笑って頷く。取られた手を握り返して、歩き出す。
「…八、」
「……え、あ…は、はい」
急に名前で呼ばれ戸惑った。
あの日、隠岐と、した日から…呼び方は馬鹿犬か江夏だったため、まだ名前を呼ばれるのは慣れていない。
というか、恥ずかしい。だから、おれもまだ隠岐と呼んでいる。
「俺とお前に最後なんてない」
「…え?…それっ、て」
ずっと一緒って事…?小さな声でそう言う。
「好きに解釈しろ」
嬉しくなって、繋いだ手を思い切り強く握った。そしたら仕返しなのか、隠岐に強く握られ骨が軋んだ。
痛い痛いと言って隠岐の肩を叩けば、隠岐は呑気に笑っていた。
どうでもいいような会話が、堪らなく幸せだった。
ただこうやって隠岐と話せる事が幸せ。
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