SMILE! 3 再び体育館近くに行くと、六と桐也先生と真樹先生もいた。 「あ、来た来た。晃雅くん、八くーん早くー」 流星に手招きされて、隠岐と共に皆の所に行く。 「八くん、僕もあげる」 はい、と花束を渡された。首を傾げていると流星はにこりと笑う。 「八くんがいてくれたから、僕も変われた。ありがとう」 「…いや、そんな…」 戸惑っていると香西にも無理矢理花束を渡される。更に戸惑う。 「ボクもあげる。…いろいろ、ありがと」 「……え、あ…、う」 なんか照れ臭くて、花束を抱いている逆の手で頬をかいた。腕にまた花束が増える。和泉と岩代だ。 「感謝してる」 「楽しかったですよ」 「……こ、こちらこそ」 軽く頭を下げると今度は加賀谷が目の前に立ち、雑に花束を渡してきた。 「オレは持って帰るのも面倒臭いし、いらねぇからやる。正直者だろ」 そうだけど… 例え、皆がいらないと思ってこの花束をくれたとしても、嬉しい。おれに言ってくれた言葉は嘘じゃないと思うから。 「カエル面白かった」 ぐしゃっと頭を撫でられ、目を細めた。 「…おれも、」 楽しかったという前に、後ろからふくらはぎを軽く蹴られた。 振り向くと隠岐が、眉間にシワを寄せておれを見ていた。慌てて視線をさ迷わせる。 「大変だねー、はちゅは。晃雅は嫉妬深いから気をつけなよー」 「…青柳、」 「おれもあげるー。約一年間ありがとー。大好きだよ、はちゅ」 言葉と共に花束を渡され、受け取った。 卒業生から貰った小さな花束が七つ集まり、大きな花束になった。 「…あ、りがとう…、皆、本当にありがとう」 泣きそうになっていると、後ろから頭を軽く叩かれた。 「お前が泣いてどうする。笑え」 隠岐の言葉に頷き、笑顔を浮かべる。 「よし、写真撮ろう!皆で!」 写真を撮るのはいいが、何故かおれが真ん中だ。右隣には隠岐がいて、左には流星で、その周りに皆いる。写真を撮るのは先生達。六がカメラを持っている。 「お前らもうちょっと寄れ」 桐也先生が手を動かしながら、指示をする。 おれ真ん中でいいのか?駄目だろ、卒業生でもないのに。 「…おれ、真ん中違う気が」 「違わないよ、八くんは真ん中で合ってるよ。ね、晃雅くん」 「ああ、お前はここでいい」 そう言われてしまえば、動くわけにもいかずその場に踏み止まる。 左腕に花束を抱えていると、右手を隠岐に取られた。ぎゅっと手を握られ、隠岐が小さく呟く。 「ずっと笑ってろ」 うん、と返事をする。 「撮るぞー」 「皆笑ってねー、最後なんだから一番の笑顔で」 六と真樹先生の言葉にカメラを見る。 一年間、いろいろあった。 傷付いた一年 泣いた一年 笑った一年 全部、今この場にいる皆のおかげ 昔の弱い自分に別れを告げた。 おれは弱いけど、弱くないから、皆の力を借りて生きる。 ありがとう、 何度言っても足りない。 皆がおれを変えてくれた。誰か一人欠けても駄目なんだ。 近くで支えてくれる人がいる。 好きだと言ってくれる人がいる。 おれのおかげで変われたと言ってくれる人がいる。 楽しかったと言ってくれる人がいる。 ありがとう、と感謝してくれる人達がいる。 それだけで幸せになれる。 生きていてよかったと思う。 この世界に産まれて、最高に幸せだと思う。 「はい、チーズ…!」 六の声に笑顔を浮かべる。 たぶん人生で一番の笑顔だったと思う。 これ以上の幸せはきっと無い。 嫌な事だってあるけど、それを大切な人と乗り越えた先には、絶対幸せが待っているから いつも、笑って生きよう。 . [まえ][つぎ] [戻る] |