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47:【ただいま!!!! おかえり!!!!】


「まァたゾロひずに泣かせたのか」
「違ェつの!!何でそこばかりテメェら気にしてんだよ!!;」
「だけど、ししっ!ひずには強くなるなァ!!!」
「ま、あいつの気持ちがどこまで本物かだな」
「ひずには強くなるっ!!!間違いねェ!!!」


ルフィの晴れやかに、だがキッパリとした物言いに皆が微笑んで頷いた。

きっとひずには強くなると信じてたから―――




『――ぶぇっぃくしょい!!!』


その頃ひずには海上を飛んでいた。アラバスタからはもう大分離れていた。

ずずっ、鼻を啜るひずに。海の潮が鼻に入ったのかな、などちょっとおかしな事を考えながら。


『そういえば、エースとアラバスタに着くまでどれ程かかったっけ?何だかあんまり長く無かった気がするなァ・・・』


かかったのは2週間と5日である。だがもちろん、白ひげ海賊団の船も進んでいるのだ。距離は伸びているだろう。

更に言えばひずにがアラバスタに滞在していた期間もあったのだ。距離は更に伸びているだろう。

そんな事は露ほども考えず飛び続けるひずに。行きと同じく体力ある限り飛び続ける事にしていた。早く白ひげ海賊団の元に帰りたいからだ。


『エース元気かなー?禁断症状とか出してないといいけど。親父やマルコ隊長とかキフリとか、うわー何だか凄く久しぶりだな!楽しみ!!』


ひずにはグンとスピードを上げて、エースのビブルカードが示す方向へと飛び続けた―――


* * *


「・・・・・・・・・」


所変わってここはモビー・ディック号の甲板の上。朝日が昇り始めの時間にそこには人影が見えた。

その人影は空をジッと見て反らさない。何か降って来るのでも待っているのだろうか。


「・・・・・・・・・」


身じろぎもせずに空ばかりを眺め、日が昇ってもひたすら何かを待っていた。


「おい」


日が昇り、人が増えたモビー・ディック号の船上。

空ばかり眺めていた男に1人のクルーが声を掛けた。


「おい、何時からそこに居るんだよぃ。俺が気付いたのは確か3日前からだった気がするよぃ。――エース」


1番隊隊長のマルコが空を眺めていた男に、エースに声を掛けた。ずっとずっとエースはひずにの帰りを待っているのだ。

ひずにと離れてもう1ヵ月半と少し。エースが白ひげ海賊団に帰ったのは8日前だった。

そろそろ帰ってくる頃だと思い、エースはここ3日不眠不休で空を見つめ何時でもひずにを迎えいれられる様に待っていたのだ。

エースの目の下には濃い隈が出来つつあった。ご飯などはクルーが運んでくれたりで空腹の心配は無かったものの、睡眠を取らないエースなど初めてみたマルコだった。


「少しくらい寝ろ、エース。ひずにが見えたら起こしてやるよぃ」


マルコが気遣いの声を掛けても返答はなく、わずかに揺れた頭に拒否の意を見て、ため息を付くしかなかった。


「エース隊長大丈夫なんですか?」


ひょこっとやって来たキフリにまたため息を出して答えたマルコ。キフリは眉をしかめる。


「・・・ああなったのは絶対ひずにのせいですよね」
「まァ、そうだな」
「あいつ絶対エース隊長に連絡するの忘れてますよ」
「・・・そうだな」


実はひずに、エースと離れてから一度もエースに連絡を取ってない。意思疎通能力を使うのを忘れていたのだった。


「・・・帰って来てから「ひずにから連絡来ない!!!」って何時も騒いでましたからね」
「・・・・・・そうだな」
「さっさとひずにが連絡を寄越すか帰ってこないと、エース隊長禁断症状でますよ」
「・・・・・・・・・そうだな」
「マルコ隊長、段々間が伸びてますけど」
「・・・・・・・・・・・・そ「もういいです」」


はぁ、とキフリもため息が出てしまう。ここ最近、いや、ひずにが出て行ってからというもの、皆どこか活気がないのをキフリは思い出していた。

静かだと言うか騒がしくないと言うか、退屈な気がするのだ。

―――親父なんか最近豪快に笑っているところを見てないな・・・。

あとエース隊長も。


「・・・早く帰ってこいよ・・・」


キフリがぼそりと呟いた。


「・・・・・・・・・・・・・・・そうだな」


マルコが答えた。


「ひずにだ」


エースが言った。


「「・・・・・・え?」」


キフリとマルコが反応したのとエースが指差した方向を見るのは同時だった。

見ると・・・、・・・。見えない。ひずにの姿は見えない。とうとうエースは耐えきれなくなり、気を紛らわせる為に嘘を言い出したのだろうか。

もしくは本当に疲れている様だ。マルコは無理やりにでもエースを休ませようと近寄った時だ。


「ひずに!!おーい!!ひずにーーー!!!」


シュバッ!!と勢いよく立ち上がると両手を上げてブンブン振り出した。


「ひずにーーー!!!おォォォーいィィ!!!!」
「おいエース!疲れちまってんだろぃ!休め!!」


だがエースは聞きもしないで必死に空に向かってひずにを呼び、手をちぎれんばかりに振っている。


「え!?ひずに帰って来たのか!?」
「エース隊長が叫んでる!!」
「でもどこだ?」


エースの大声を聞きつけて、クルー達が甲板にぞろぞろと集まりだした。


「何だとォ!!?ひずにが、ひずにが帰って来たのかァ!!!??」


そして親父も慌てるナース達と共に飛び出して来て、白ひげ海賊団全員での出迎えとなった。

だがやはり空にはひずにの姿は無い。

必死なエースをもはや哀れに思ってしまうマルコだった。

――しかし、


「・・・・・・あれ」


キフリから疑わしいが期待が少しこもった様な"もしかして"という様な声が聞こえた。

他クルーも「あれ、アレか!?」などとざわつき始める。

・・・まさか。

マルコが目をもう一度空へと向けると、黒い点、じゃなくて白っぽい点が見えた。―――ひずに!!?


「おォォォい!!!おいおォォォオオオい!!!ひずにっ!!!ひずにィィィ!!!」
「マジかよぃ・・・!」
「エース隊長何で・・・!!?」


自分達には見えなかったのにどうしてエースは気付いたのか、びっくりを通り越してもう凄いとしか思えなかったキフリだった。

白っぽい点は何時の間にか大きくなってVの字の様に、そして顔や翼の形が分かり、


「「「ひずにだーーー!!!」」」


はっきり全部見えた頃にはもう目の前に迫っていた。もの凄いスピードだ。


「(バッ!!)ひずに!!!」


エースはニカッ!と笑うと大きく両手を広げ受け止める形になる。


「おかえりひ『ただいまエースゥゥゥウ!!!!』ぐァっはァっ!!!」


ド ガ ァ ッ ・・・ !!!


でかい衝撃音と共に吹っ飛ぶエースの体。それは後ろに居たマルコやキフリ、クルー達や親父を巻き添えにして薙ぎ倒した。


「いってて・・・全く!!ひずには・・・!!」


皆は倒れているエースを見やると、その上に倒れ身じろぎしないひずにの姿も見えた。


「たく・・・!ひずに!!」

「「「「「おかえりひずに!!!!」」」」」


家族皆でひずにを大声で迎えた。愚痴を零すもののこれが何時もの事でありひずにだからだ。ひずにへの歓迎の意だ。

だが、それにひずに、エースも動かない。全員がどうしたのか、と首を傾げた時、


「『・・・・・・グゥーzZ』」
「「「寝たのかよ!!!」」」


2人から聞こえたいびきにつっこむものの、すぐにドッと笑いが溢れた。

"何時もの事"が久しぶりに起きて喜びを感じる者がほとんど、いや全員がとても楽しそうに笑っていた。

暖かい家族皆の中で、エースの体温を感じて、ひずにはとても幸せそうな顔をして眠っていた。



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あきゅろす。
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