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46:【またね!】

「いやーーーーーっ!!!よく寝た〜〜〜っ!!!!」


ルフィが目覚めたのは終結から3日後であった。


「3日??おれは3日も寝てたのか?・・・Σ15色も食い損ねてる」
「何でそういう計算早いのあんた;」
「しかも一日5食計算だ」


そしてルフィはあり?と首を傾げた。


「あり?ひずには?あいつトイレか?」
「違ェよ。ひずにはもう帰ったぜ」
「え?帰った!?って事はエースの所にか?」
「ああ、そうだな・・・」
「何だよあいつ〜!!俺が目ェ覚めるの待たないで帰っちまって!!」
「あんたのお兄さんと約束してたじゃない。1週間したら帰るって」
「そうだったけか。あ〜あ〜ひずにもう帰っちまったのかよ〜」
「何よ、寂しいの?」
「またひずにの背中に乗って空飛びたかったぞ俺は!!!」
「そっちかよ!!!;」


残念だー、など言う我が船長にゾロは溜め息を付きつつ言う。


「まァまた会えるだろ。俺達がこの海を上ってけばな」
「そうだな。そんときゃエースとも会えるし!!」
「しかし昨日、ひずには大変だったぞ?」
「ん?どうしたんだ?あ!!もしかして俺達の仲間に入りたい、って言ったのか!?」
「それとは真反対だな」


ウソップが思い出す様に語った。


* * *


『皆!!ちょっと聞いて!!』
「あ?何だよ」
「どうしたのよひずに」
「?」


眠っているルフィ以外を集め、喋り出したひずに。


『実は今日でエースと約束した1週間なんだ』
「ああ、そう言えば」
「もう1週間経っちまったのか」
「えぇ〜〜〜!!?ひずにちゃんもう帰っちゃうのォォォォ!!?」
『うん!!今日帰る!!』
「もうちょっと居られないの?私ひずにともうちょっと話たいと思ってたのよ」
「私も・・・」
『ゴメンナミ、ビビちゃん。僕ももうちょっと居たいけど・・・エースと約束したし』
「そう、残念ね・・・」


それでね・・・、とひずには続けた。


『僕、とっても怖かったんだ』
「「「?」」」
「怖かったって、クロコダイルに殺されそうになったからか?」
『ううん、人を傷付けていたかもしれない、って事』
「ひずに剣士だろ!?今更何言ってんだよ?」
「・・・・・・」
『・・・剣士なんて、程遠いよ。いくら特訓積んだって、僕は、・・・人を傷付けるのを怖がってしまう。エースや、家族を守る為に剣をとったのに・・・』


その言葉にゾロが反応した。


「ひずに、お前は剣をとったのに、人を傷付けちまうとビクビク怖がってたのか・・・?

バカかテメェは!!!」


ビクッ、とひずにはゾロの怒声に体を震わせた。


「元より刀ってもんは人を傷付けるもんなんだ!!お前はそれを手にとる前からその覚悟を決めておかなきゃならねェんだ!!!

そんな覚悟も出来てねェで何が家族を守るだ!!!自分すら守れねェだろうが!!

お前ェみてェなもんは戦場に立たない事をお勧めするぜ。・・・だいたいから家族を守る為に、っていうのも本当かどうかなァ・・・?」
『!!! そんな!!家族を守る気持ちは本物だ!!!僕は・・・!!』


ひずにはゾロの言葉に激昂して顔を真っ赤にして叫んだ。

それを遮る様にゾロが大声を出す。


「本物なら!!!」


ゾロは一度そこで切ると、


「家族を想う気持ちが本物なら、強くなってみせろよ!!!!」
『!!!! ・・・うっ』


ポロリ、と。

ひずにの目から落ちたのは、涙だ。

珍しくサンジが黙ってゾロの言葉を止めさせる事なく続かせていた。


「図星突かれたからって泣いてんじゃねェぞ、ひずに。これから先、今以上に辛ェ時はある。ずっとな」
『・・・! ああ、そうだった・・・』


ひずには思い出していた。自分がこの世界に来てすぐにエースに言った言葉を。


『この先に何があるかなんて関係ない。それを全部受け止めてやるつもり!』


『僕は・・・忘れてた。エースに言った事・・・僕は受け止めてやる、って。・・・最悪だな』


自嘲気味に笑うひずにに、皆が黙って続きを促した。


『こんなの海賊としてヤワだしダメだと思う。もっと、もっと精神的に強くならなきゃ・・・。今のままじゃいけない』


フと顔を上げたひずにの濡れた目には、決意が満ち溢れていた。


『今回、僕はこの戦争で自分がまだまだ弱くてまだまだ未熟者だって事が分かったんだ。

戦争が良いって訳はもちろんないんだけど、でも、僕は気付かせられて、いい刺激になった、と思う・・・。

・・・僕は、今の家族を守る為に剣をとったんだ。オヤジやエース達を守る為に。

もう、こんな思いイヤだ!まるでエースを、家族を裏切った様なこんな・・・!!

僕は!!!

強くなる!!!!!』

「・・・ああ、なれよ」


ゾロは満足気にニッと笑った。


「あんた、頑張りなさいよ。自分の甘さを捨てるって安易な事じゃないんだから・・・」
「ひずに、頑張るんだぞ!」
「俺もひずにちゃんを応援するぜ」
「頑張って!!ひずにさん!」
「もしもの時はこのキャプテン・ウソップに頼れ!!」
『ありがとう、皆。・・・・・・うぅっ、うわぁぁああチョッパーうわあぁぁぁぁあ!!』
「えええ!!?ひ、ひずに!!?」


チョッパーを抱えて泣き出したひずにはわんわん泣く。


「ゾロがひずに泣かせたー!!!」
「「「泣かせたー!!!」」」
「うるせェよお前ら!!!またか!!!」


ひずにはチョッパーの帽子に顔をうずめて泣いた。様々な気持ちがひずにの中で回っていた。


まだまだ自分は未熟で弱くて、
自分が言った事なのに出来なくて、
覚悟も出来てなくて、
どこまでも自分は甘くて、
家族を守る事はまだ無理だと分かった。

だけど、

家族が大事な気持ちは本物、
守りたい気持ちは確かで、
その為の特訓への気持ちは本当だった。


強くなりたい―――


弱くて言う事しか出来ない自分を応援してくれる人達に、強く強く感謝した。




やっと泣き止んだひずにはチョッパーを開放した。チョッパーの帽子はぐっしょり濡れてしまっている。


『ああー・・・ゴメンチョッパー。帽子濡らしちゃって・・・;』
「いいぞ!ひずにはこれから頑張るんだ!今の内にたくさん泣いとかないと」
『ハハッ、ありがとうチョッパーvV』


ぎゅうぅぅと抱きしめられるチョッパーをサンジが羨ましげに見ている。ゾロはそれを呆れた目で見ていた。


「それで、ひずにさんは何時出発するの?」
『うーん、・・・今?』
「何で疑問系なんだよ?;」
『今日出発は確かだけども、今日の何時出発するかは決めてない!』
「何でそんな自信満々なんだよ!!;」
『あー、でも、今出る!』
「もう行っちゃうのォォオオ!?」
『うん!早くエースに会わなきゃ!』
「何でよ?ひずに」
『エース僕が帰り遅かったりしたらこう・・・危ない気がする』
「「「成る程」」」


ひずにの少ない言葉だけでも理解した麦わら海賊団。エースとは短い出会いだったのに凄い。


『・・・よし。忘れ物ないね・・・。それじゃ、僕行くよ』
「また絶対会おうねひずにちゃんんん(泣)」
「またな!ひずに!」
「ひずにさん、気をつけて!」
「また会おうぜ!!」
「頑張りなさいよ」
「負けんじゃねェぞ」
『本当にありがとう皆!!短い間だったけど、お世話になりました!!ルフィによろしく!!!』


窓から飛び出そうとしたひずにだが、ためらいがちにその動きを止めた。


「? どうしたんだ、ひずに」


不思議に思ったウソップが声を掛けた。


『あの、さ、聞くの変かもだけど、』
「何よ?」


くる、と顔だけ皆に向かせたひずには何とも言えない、ためらいと恥ずかしさの交じった表情をしていた。


『皆の事、友達って思っていぃ・・・?


最後には細々と小さい声になり、俯いてしまった。

ひずには何だかもの凄く恥ずかしい気持ちになっていた。よく分からないが、コレを聞くのが変というか、何とも、


「あんったバカじゃないの?」
『! ・・・お、う、』


ナミの言葉に顔を上げ目を見開くひずに。恥ずかしさで真っ赤だ。


「何で今更そんな事聞くんだいひずにちゃん!」
「本当に今更すぎるぜオイ!」
「俺は最初から友達だと思ってたぞ!?」
「友達に決まってるじゃない!」
「・・・まァ、そういう事だ」


何ともバカ。そうだ、バカだ。

皆の言葉に気付かされ、もう湯気が出ているんじゃないかと思うほどにひずにの顔は熱くなっていた。


『う、あぁ、う、ん、ありが、とう・・・』
「何でそんなに恥ずかしがってるの。本当にバカねェ・・・」
「照れてるひずにちゃんかァァアわィィイい!!!vV」
「ふふふっ・・・」

ひずには思わず顔を自分の手で挟み何とか恥ずかしさを抜こうとしていた。そして頭を振る。


『ふ、アッハハ!ありがとう!皆ありがとう!!』


そして恥ずかしさが抜けたらしいひずには、満面の笑みになると声を張り上げて感謝の言葉を言った。


『それじゃ、僕は行くね!またね!!』


ひずには手をぶんぶん振るとバッ、と窓から翼を広げ飛び出した。友達の「またね!」という声に送られて。


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あきゅろす。
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