45:【決して語られる事のない戦い】
とりあえず移動しなきゃ・・・。
クロコダイルの意味不明発言により頭は混乱しているが、とにかく降ってくる岩盤を避ける為ロビンちゃんを支えながら移動する。
コブラ王と一緒に居た方がいいだろう。いざと言う時は一緒に逃げれるし。
「君・・・」
『ちょっとここに居させてください。ここがまだ降ってこなさそうだし・・・』
「・・・兵器を指し示す"コンパス"とは、本当なのか?」
『・・・知らないです。そんな事ありえませんって』
思わずムッとなってしまう。絶対ありえない。あるはずがない。というよりもどうやってコンパスなんかになるんだっての。
僕の顔を見て悪いと思ったらしく、バツが悪そうな顔をするコブラ王。
「すまない。君の気を悪くしたようだ」
『いえ、すみません。僕も今初めて聞いたんでこんがらがってるんです』
「そうか・・・」
コブラ王は微妙な顔をし、ロビンちゃんを見た。
「その女を、助けるのか?」
『何故そんな事を?』
「いや、その女は世界的大犯罪『何言ってるんですか』!」
『知りませんよ。そんなの。それが助けない理由なんかになりますか?』
「・・・君は、この女の何を知っている」
『・・・ロビンちゃんを知った風に言ったら怒られちゃったんで、言えませんよ。ハハハッ』
僕は軽く笑うとロビンちゃんの傷の止血をしようと思い、自分の着ていたローブを細く裂いて包帯状にした。
『簡易的だけど、包帯巻くね』
傷に当てようとした時、ロビンちゃんが僕の手を払った。
「やめてちょうだい」
『!? ロビンちゃんそんな事言ってられないよ!?』
「私はもういいの。・・・もう、終わったの」
『何がさ。訳分からないよ。ほら、傷見せてよ』
僕が無理やりにも包帯を巻こうとした時だ。
「お前の目的はこの国にはねェ筈だ!!!違うか!!?他人の目的の為に・・・!!?そんな事で死んでどうする。
仲間の一人や二人・・・!!見捨てれば迷惑な火の粉はふりかからねェ!!全くバカだてめェらは!!」
崩れ落ちる岩盤の音のなかで、クロコダイルの怒声が聞こえた。
「・・・だから、お前はわかってねェって言ったんだ・・・」
次に聞こえたルフィの声に目を向けた。
「ビビは・・・、・・・あいつは人には死ぬなって言うクセに・・・自分は一番に命を捨てて人を助けようとするんだ・・・。
・・・放っといたら死ぬんだよ。お前らに殺されちまう!!」
「――わからねェ奴だ・・・だからその厄介者を見捨てちまえばいいとおれは・・・」
「死なせたくねェから、"仲間"だろうが!!!」
「・・・・・・!!」
『・・・・・・』
僕の心にルフィの言った"仲間"という言葉が反復する。何度も何度も。
どうしてこんなにも染み渡るように聞こえるんだろう・・・?
「・・・だからあいつが国を諦めねェ限り・・・おれ達も戦う事をやめねェんだ!!!」
「・・・たとえてめェらが死んでもか」
「死んだ時は、それはそれだ・・・!!」
ガクン・・・
『・・・!! ルフィ!!!』
「クハハハハハ・・・口では偉そうに吠えるも・・・結局体は言う事聞かねェか!?いいザマだぜ麦わら・・・!!!」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・!!!ハァ・・・!!!ハァ・・・」
ルフィは力尽きて倒れてしまった。悔しげに唸るが力が入らなさそうだ。
「ウウウ・・・」
「クハハハハハハハハハハ!!!」
高らかに笑うクロコダイルは言葉を続ける。
「このおれに・・・勝てるか!!!どうかだ!!!
お前がどれ程仲間を想おうと、お前らがおれの計画を阻止する為、どれだけ立ち回ろうとも・・・!!!
ここで、おれに勝てねェのなら今までてめェらがやってきた、全ては水の泡だ!!!
所詮、てめェの様なかけ出しの海賊が楯ついていい相手ではなかったのさ・・・。
・・・・・・どうしようもねェ事なんざ世の中には腐る程ある・・・!!!
終わりだ」
―――砲弾の爆破時間―――
「・・・・・・過ぎたところを見ると、砲撃は止められちまったか・・・」
「・・・・・・!!!」
え!!?てことは爆発は止まっ・・・
「だが、いずれ爆発する・・・"時限式"だからなァ・・・」
「『・・・!!?』」
「何という卑劣な・・・!!!」
「ハハ・・・周到だとせめてそう言ってほしいもんだな・・・Mr.コブラ・・・!!」
クロコダイルは、時間までに"砲撃手"の身に何かが起きた場合に、「砲弾」を自動的に爆発する"時限式"にしていたのだ。
「広場のド真ん中に打ち込みてェところだったが・・・。まァ、あの場所からでも被害のデカさに支障あるまい」
「・・・・・・!!!」
「クハハハハハハ・・・」
『・・・くォんのォ!!!!クロコダイルゥゥゥ!!!』
頭に来た僕は落ちていた岩を掴むと思いっきしィ・・・!!!
『てァらァアッ!!!!』
「Σ!!!??」
ぶん投げだゴラァァァァァァ!!!!
「ッ、チッ、てめェ・・・!!!」
避けやがった!!!コンニャロ!!!もう一発・・・!!!
「ひずに!!!!」
『(ビクッ;)Σ!!!』
「ハァ、手、出すんじゃねェよ・・・!!!おれが、ぶっ飛ばすんだ・・・!!!!」
『・・・・・・!!!ご、ゴメンルフィ・・・』
ルフィの迫力に、・・・気圧された。クロコダイルへの怒りが消える。
そして、ルフィが立ち上がった。
「!!!」
「お前、なんかじゃあ・・・」
「?」
「ハァ・・・!!!おれには勝てねェ。ハァ・・・!!」
「やっとしぼり出した言葉がそれか・・・。今にもくたばりそうな負け犬にはお似合いの、虚勢・・・!!!根拠もねェ・・・!!!」
「おれは、"海賊王"になる男だ!!!!」
「!!! ・・・いいか小僧・・・この海をより深く知る者程、そういう軽はずみな発言はしねェモンさ。
言ったハズだぞ、てめェの様なルーキーなんざこの海にゃいくらでもいるとな!!!
この海のレベルを知れば知る程に、そんな夢は見れなくなるのさ!!!」
パシ・・・!!
バキ ィン!!
!! 毒針を折った・・・!
「・・・おれはお前を・・・超える男だ・・・!!!」
大声を上げると、ルフィは攻撃を次々と繰り出す。クロコダイルをどんどんどんどん圧していく・・・!!
「(ジャキン…!!)・・・どこの馬の骨とも知れねェ小僧が・・・!!このおれを誰だと思ってやがる!!!」
「お前がどこの誰だろうと!!!」
「!!」
「おれはお前を超えて行く!!!!」
仕込み刃を出し、突き付けたクロコダイルをかわすとルフィは思い切り上へと蹴り上げた。
「・・・コノ聖殿と共にさっさと潰れちまうがいい!!!"サーブルス(砂嵐)"「ペサード(重)!!!!」」
ド ゥ ン !!!
重くでかい砂嵐がのし掛かり、崩れに崩れていた聖殿は更に崩れなだれ出す。
「ん〜!!」
ルフィはたくさん息を吸いながら体を捻り、
「!?」
ぶうっ!!!と息を勢い良く吐きながら上へと登る―――
「・・・・・・!!!」
コブラ王も僕も、ただこの戦いを息をするのも忘れて見ていた。
「"ゴムゴムの"・・・」
「!! "デザート(砂漠の)"・・・」
「「"ストーム(暴風雨)"!!!!/"ラ スパーダ(金剛宝刀)"!!!!」」
お互いの技がぶつかり合う―――ルフィの拳が・・・勝った!!!
ドガガガガガガガガガガ
「!!!」
「おおおおおおおお」
ガガガガガドゴォン!!
「ああああああ」
クロコダイルが打ち付けられた岩盤のビキビキと割れる音――
「ああああああ!!!」
「!!!」
ド オ ‥ ン !!!
クロコダイルが、ルフィの拳によって・・・ぶっ飛ばされた―――!!!
ボコォン!!!
大きな音を立て、落ちてきたルフィ。
「オイ!!」
「『ルフィ!!!/君っ!!!』」
やった・・・ルフィ・・・!!!
「礼を言う」
コブラ王の言葉に、
にい!!
「いいィよ」
ルフィは笑顔で答えた。
『!! 首回りの砂無くなってる!!!よし、脱出しよう!!!』
「その前に、早くそれを飲ませてあげなさい・・・」
『! ロビンちゃん!!』
「クロコダイルから受けた毒を中和できる・・・」
『ロビンちゃん本当!!?ありがとう!!!』
「・・・・・・」
ルフィの口に流し込んで飲ませる。よし・・・。
「なぜ、嘘をついた」
『・・・?』
「・・・知ってたの・・・?イジワルね・・・」
「その石にはこの国の歴史など刻まれていない・・・・・・!!」
どうやら"兵器"の事は本当にポーネグリフに書いてあったそうだ。
「クロコダイルにそれを教えていれば・・・あの時点で、国は、あの男のものになっていた。違うか?」
「私にはそんな事どうでもいい。もとよりクロコダイルに"兵器"を渡す気もなかった」
ロビンちゃんが求めているものは、
「"リオ・ポーネグリフ(真の歴史の本文)"」
「!?」
世界中に点在する"ポーネグリフ"の中で唯一、"真の歴史"を語る石を求めて。
「・・・ここが最後の希望だった。そして・・・・・・ハズレ。
・・・ここでこのまま死ぬのならちょうどいい・・・。この道で生きて行く事に私は疲れた・・・。
―――ただ"歴史"を知りたいだけなのに・・・」
「・・・!!!」
『・・・』
「私の夢には―――敵が多すぎる」
「・・・!!!・・・もしや・・・!!!語られぬ歴史は・・・紡ぐ事ができるのか・・・!!?その記録が"ポーネグリフ(歴史の本文)"だと言うのか!!?」
『・・・???』
一体何の話をしているか分からないな・・・。
フッ
『! ルフィ!』
「(ガッ!)!!!」
「(グイッ!!)え!!?」
「よし、登ろ」
『はぁ、無茶しないの!』
重傷のクセに大人2人を抱えたルフィにため息を吐くと僕も立ち上がり、コブラ王を支える。
「・・・ちょっと待って!!私にはもう生きる目的がない・・・!!!私を置いて行きなさい!!!」
「?」
ルフィはロビンちゃんの言葉に不思議そうな顔をした。
「何でおれがお前の言う事聞かなきゃいけねェんだ・・・!!!」
「!!?」
『(・・・・・・)』
ルフィって、凄いな・・・。
僕は翼を出すと、グンと力を込めた。
* * *
『コブラ王、もういいですよ。後は僕が運びますから』
「いや、これぐらいさせてくれ。命の、国の恩人だ」
『・・・そうですか』
僕達は雨の降りしきる戦場の跡を歩いていた。ルフィは地上に出ると疲れ果てたのか眠ってしまった。コブラ王が背負って運ぶと聞かない。
『・・・あ、』
「ひずにちゃァ〜ん!!!」
「いたか」
『皆・・・!ボロボロ・・・』
サンジ、ゾロ、チョッパー、ナミ、ウソップだ。皆も、激戦だったんだね・・・。
「・・・・・・君達は?」
「・・・アァ、あんたのその背中のやつ、運んでくれてありがとう。ウチのなんだ、引き取るよ」
「・・・では君らかね。ビビをこの国まで運んでくれた海賊達とは」
「ア?おっさん誰だ?」
『サンジ、おっさんじゃなくてこの人は、』
「みんな!!パパ!!?」
「ビビだ」
「パ・・・パパ!?ビビちゃんのお父様!!?」
「あんた国王か」
『あんたって、ゾロ』
「一度は死ぬと覚悟したが、彼に、救われたのだ」
コブラ王はルフィを下ろした。
「・・・・・・」
「クロコダイルと戦ったその体で彼女の力もあり人2人抱えて地上へ飛び出した。信じ難い力だ・・・」
「・・・じゃあその"毒"ってのはもういいわけだ」
「・・・ああ、中和されたハズだ・・・。だが、ケガの手当てをせねば・・・君達もな」
「それよりビビ、早く行けよ」
「え?」
「広場へ戻れ」
「そりゃそうだ。・・・せっかく止まった国の反乱に・・・王や王女の言葉もナシじゃ・・・シマらねェもんな」
「・・・ええ。だったらみんなの事も・・・」
「ビビちゃんわかってんだろ?オレ達ぁフダツキだよ・・・。国なんて関わる気はねェ・・・」
「おれはハラがへった」
「・・・・・・(コク)」
ビビちゃんは頷くと、コブラ王と一緒に広場へと向かった。
フラッ・・・
ッドサァ・・・!!
『・・・アッハハ・・・皆から元気出しちゃって・・・皆・・・優しいんだから・・・。
あまり動いてないけど・・・僕も疲れた・・・そういや全然・・・・・・寝てな、い・・・・・・』
僕は急激に襲ってきた眠気に抗えることもなく、雨に打たれながら皆と一緒にその場に寝転んだ。
―――後に歴史に刻まれる戦いと――
決して語られる事のない戦いが――
終結した――――
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