2:【命いっぱい】
『いや〜・・・すごいね』
ブオオオオオオオオ・・・とストライカーは進む。だってさ、本当に足が炎になってそれを動力源としてる。こりゃ一生尽きないエネルギーだよ。今の日本に必要だよ。
「そうか?ひずにのほうがすごいと思うぞ。なんてったって落とし子だしな!」
『落とし子だからって何にも力なんて・・・羽生えて飛べるけど。全然戦力にはならないでしょ』
「大丈夫だって!俺がひずにを守るから!」
『・・・!ああ、もう幸せすぎるよ・・・!』
「ん?何がだ?」
『気にしないで!ただ僕は幸せをかみ締めているだけだから!』
「そうか」
ああ、もう僕今幸せすぎて出血多量で死ぬ自信あるね。え?何で出血多量かだって?もちろん鼻血が止まらないからに決まってるじゃないか。
『エース!聞いて!僕の世界は平和で平和で平和な世界だったんだ』
ひずには自分のことを話した。家族、友達、ペット。いつものくだらない日常。平和で平凡な日々。そんなもんだから退屈をしていたこと。ONE PIECEの漫画が大好きだということ。ONE PIECEの世界に行きたいな、なんて叶わない思いをしていたことも。
『でもさ、今こうやって僕はこの世界に来た。それってすごいことだよね?だから、僕はこんなすごくて楽しいことを命いっぱい楽しむことにした!』
『だって楽しまなきゃ損じゃん!この先に何があるかなんて関係ない。それを全部受け止めてやるつもり!』
『エースと会えたのも何かの縁!きっとこれから楽しいことが、大変なことや苦しいこともある!』
『でもさ!厚かましいかもしれないんだけどもし僕が全部受け止められなかったらエース、その時はよろしくね!!』
「・・・・・・やっぱりひずにはすげェよ!」
エースが振り向いてニカッ、と笑った。
「普通は異世界に来ちまったら怖くなったり、自分の居たとこに帰りたくなるもんだと俺は思うんだ。でもひずには逆にそれを楽しむなんて言い出した」
「自分が好きな世界ってこともあるかもしれねェけどよ、ちゃんと大変なことも苦しいことも受け止めるってお前は言ったんだ!俺はひずに、力なんて関係ねェよ。その人自身の中身が大事だと思ってる」
「厚かましくなんてない。受け止められなかったら俺が受け止めてやる。ま、ひずにが受け止めれないなんてことはそうないかもしれないけどな!」
ひずになら大丈夫だ。それを聞いてひずには嬉しくなって声をあげて笑った。
* * *
「あれが親父の船、モビー・ディック号だ」
『でけェェェ!』
遠目からみても分かるくらいにモビー・ディック号はものすごくでかい。1000人くらいクルーがいるのかな?
ストライカーを船のそばに付ける。すると上からロープが降ってきた。それをストライカーにつけて引き上げてもらうらしい。
次に縄梯子が降ってきた。
「ひずに、先に行け」
『あーい』
意気揚々とのぼり始めたひずにであったが、
(もう疲れてきた・・・・!)
半分上ったところでもう腕が疲れてきてしまった。
「ひずに大丈夫か?」
『何気きついね!;』
「そうか?あ、飛べばいいんじゃないか?」
『あ、そうか』
その手があった!
『でもさっきみたいに飛べるの?;』
「やってみなきゃ分からないだろ?」
『おう・・・せいっ!』
「・・・(掛け声?)」
ひずにが気合を入れるとまた背中が光り翼がでてきた。どうやら自分の意思で羽ばたかせれるようだ。何度か試してからえいっ、と縄梯子を離した。
『おっ?おおっ!?』
成功!
「よし、じゃあ上るか」
『うん!やばい!コレ楽しい!』
まるで最初から飛び方が分かっているかのようにスイスイ飛べる。楽しくてしょうがない。
エースより先に上がって船の塀から顔を出した。
「!?誰だテメェはァ!!?」
『うえっ!?えええ!?何かゴメンなさいィィィ!!』
急に怒鳴られサッ、と首を引っ込んでしまった。だってすげー怖いぞ!?怒鳴られるのちょー怖いぜ!?
『エースエース!なんかちょー怒られた!!すげー怒鳴られたぜ!?』
「ん?驚いたんじゃねェか?」
『ああ、そうか』
「よいしょ、と。悪いな驚かしちまったようで」
エースが甲板に立ってさっきひずにを怒鳴ったクルーに声をかける。
「え、エース隊長!そんなことはないんですが・・・そこの女は・・・?」
「ああ、俺が拾ったんだ」
『拾ったって・・・。えっと僕はひずにって言います。よろしくお願いします』
「あ、ああ・・・」
なんか握手求めたらギクシャクしながら手握られた。全くどうしたんだろうか。
気づけば周りに他のクルーが集まって僕のことを変な目で見てる。アレ?僕ってそんな変なの?
「悪ィ。ちょっと親父のとこに通してくれ」
エースがそう言うと集まっていたクルー達が脇に避けてくれる。わぁ隊長。
エースの後ろを付いていくと、ひとつの部屋の扉の前に立つ。エースがノックして中に入った。
「悪ィ親父、邪魔するぜ」
「んァ?どうした」
ひぃぃぃぃぃぃぃぃ・・・・!!ひずには心の中で精一杯叫んだ。
目の前にいる親父の威圧にものっそい足が震えだしたのだ。
「グララララ・・・!そこの鼻垂れたガキは何だァ?」
エースが目であいさつをしろ、と訴えている。ひずには慌てながら
『はっ、初めまして白ひげ様・・・!あのっ、あの僕は、ひずにと言います!!』
「えらくどもってるじゃねェか。俺がそんなに怖いかァ?」
『へっ、!?あ、あの何というかものすごい威圧でして・・・あっ!いや!別に悪い意味じゃないんです!!もっとこう、人の上に立つような威圧です・・・!』
「グララララ!!エース!こいつは舌の回るやつを連れてきたな!」
「本当のことだろう。親父、ひずには拾ったんだ」
「拾っただァ?」
「ああ、実は・・・」
エースが白ひげにひずにを拾った(出会った)経緯を話した。
それを聞き終わって白ひげは豪快に笑っただけだった。
「グララララ・・・!そいつァ面白ェな!」
そして白ひげは言った。
「ひずに、俺の娘になれ!!」
『へっ?』
・・・・・・・・・・。
『ほんとですかァァァァァァァ!!!??』
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