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20:【とびきりの】
一緒に話をしていたシャーリーとアンは仕事で行ってしまった為、暇になったひずにはぶらぶらしていた。

もう特訓も終わってるし、シャーリーやアンは仕事だし・・・暇だなァ。

そんなことを思いつつ自然に足が向くのはエースの部屋である。暇な時や相談事がある時はエースのところに行く。もはやそれが当たり前のことになっていたのはいつの頃からか。

部屋をノックもしないで開けた。そんな事をして着替え中だった、などの事は何度かあったがひずにはそれ程度は気にしないほどになっている。


『やっほ〜エース、暇だからきーたー・・・?』


開けて部屋を見渡してみたがエースの姿は無く、ムゥ、と少し頬を膨らましたひずに。甲板に出ることにした。

甲板に出てエースを探すがおらず、船全体を探してもおらず、ムゥゥゥ、と不機嫌顔になっていくひずに。

不機嫌顔のせいか、近くにいたクルーに声をかけられた。


「どうしたんだよひずに、おっかねェ顔してんぞ」
『いや、さ、エースが居ねェなァって・・・』
「あ?エース隊長のことか?きっと親父のとこだと思うぞ」
『え、そうなんだ』
「ああ、何か任務がエース隊長に入ったからな。きっとそれについてだと思うぞ」
『えー!僕聞いてない!!何で言ってくれなかったんだエースの馬鹿野朗!!』
「本当に隊長にそんなこと言えるのお前くらいだぜ・・・」
『エースは怖くないもん。んじゃ親父のとこ行ってくる!ありがと!』


ひずには礼を言うと親父の部屋に駆け出した。そして扉の前に着くと勢いよく開ける。


『エース君居ますかァァァ!』


そこにはビックリ顔のエース、そして親父。


「え?ひずにどうしたんだよ?」
『エース君任務って本当ですかァ!?』
「えっ、えーと何のことかな〜。アハハ〜」
「エース、もうバレちまった事は仕方がねェだろう。教えてやれ」


親父に促されたエースは少し辛そうに話した。


「あー・・・、実はなひずに。俺は2週間位かかる任務に出なきゃなんなくなっちまったんだ」
『へェ、そうなんだ。気をつけていってらっしゃい。あ、お土産よろしくネ☆』
「えええええ!何か軽っ!!」
『え?何が?』
「い、いや・・・ああ、お土産、持って帰ってくるよ・・・」
『・・・ブッ』
「え?ひずに?」


見るからにションボリしたエースを見て笑い出すひずに。


『アハハハ!ごめんエース!ついエースのションボリした姿が見たくなって!アハハハ!』
「え、ひずにってSだったのか・・・!?」
『さァどうだろう。アハハ〜』
「うっ、俺はお前と離れたくないんだよ!お前も俺と離れるのは寂しいと思って!可愛い愛娘を一人にするなんてそんな事できないからァ!!」
『(別にそこまで寂しいとは思わないかもな)・・・パパ、ありがとう。でもね、仕事は大事でしょ?僕は、パパの帰りをちゃんと待つからね。送る時も帰ってきた時もとびきりの笑顔でいるよ』


ニッコリと笑顔でちょっと思っている事とズレている事を言うひずににジーンと感動したエース。


「・・・!ぱっ、パパはこんな良い子にひずにが育ってくれて嬉しいよ!すぐに帰ってくる!1日で帰ってくる!!」
『や、それは無理でしょ』
「うっ」


アホなエースに少し心配を抱いたひずにである。

そこに親父が笑いながら言う。


「安心しろひずに、エースが居ねェ間は俺がいるだろう?」
『そうだね、寂しい時は親父の膝に寝に行くよ』
「あ!ひずに違うぞ。ひずには親父のことを"おじいちゃん"って呼ばなきゃダメだ!」
『あ、なるほど。エースがパパだもんね。じゃァ親父は今度からおじいちゃんね』
「・・・!おじいちゃん・・・だとォ?」


アレッ、怒らしちゃったかな?と少し焦りだすひずに。


「おじいちゃん・・・いいじゃねェかそれ!うん、おじいちゃん、良い響きだ・・・」
『えっ、おっ?アレッ?アレッ?』


おじいちゃんという響きが気に入った親父、改めおじいちゃん。


「孫ができたみてェで嬉しいぜ俺ァ!グララララ!!!」
『アハハ!良かったねおじいちゃん!』
「よし!任務に出る決意も固まったし、出るなら早いうちがいいからな!俺準備してくる」
『じゃァ見送りしなきゃね』


甲板に出てストライカーを海に下ろしておく。簡単な荷物だけを持ったエースがストライカーに飛び乗った。

ひずには飛んでエースの近くに浮く。そして、


『行ってらっしゃい!』


ニッコリと、それはもうとびきりの笑顔で送る言葉を言った。


「ああ、行ってくる!」


それに対しエースもニカッ、と笑った。

そして勢いよく炎を上げると物凄いスピードで行ってしまった。

エースが見えなくなるまで見続けた。

そしてひずにはある事に気づいた。


『意思疎通能力使えばいつでも話できるんじゃないかなァ・・・』


ごもっとも。



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