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17:【失望した】
昨日、ひずには夕飯に顔を出した時はケロッとしていて、いつものごとくにエース隊長とバカ騒ぎをして笑っていた。

俺はその現場には居なかったけれどひずにが泣いていたというのは周りの奴等から聞いた。

そいつを聞いた時はただただ驚いた。笑うときゃ大声で笑い、怒ったときにはキーッ!と騒ぐうるさい奴で。結構感情豊かなアイツでも泣き顔ってのは見たことがなかった。

アイツはこっちに来てから今まで、本当に幸せだ、と全身で表現しているかのごとくだったから。

アイツは、今ここに居る場所を自分の居場所だと、最初からそうであったのかのように振舞っていた。

それはもう俺だって、俺達だってそう錯覚するほどのもんで。

でも実際は、元居た自分の世界のことを思っていたハズだ。

あっちには、ひずにの本当の家族や友達が居るだろう。

やっぱり寂しいところはあったんじゃねェか?顔には出さないでずっと心の中で・・・?



―――今ひずにはエース隊長が買ってきた服を着てファッションショーみてェなことをやってる。今日もいつものようにバカみたいに笑っている。

見れば分かる。アイツは心底笑ってる。アイツの作り笑いなんてものは見たことがねェけどきっと一発で分かる。嘘を付くのがヘタクソだからな。


『アッハッハッハッハッハ!!!』


少し遠いってのに響いてくるひずにの笑い声。本当に良く笑う奴だしな・・・。


『ブッ!ブハッ!!ぶひゃひゃひゃひゃひゃ!!!』


・・・こう、女ッ気がねェな。


『あひゃひゃひゃアッハッハッハッ!!ひぃひぃアッハッハッハッハブハハハハハ!!!』


つか・・・、


「うるせェよ!!!」
『ブハハハッ!!えっ?何、ブッ、キフリ君。ブハハハあっひゃっひゃっひゃっ!!!』
「オイ、今まで俺の感傷に浸っていた時間を返せ」
『はっ?ククク、何言ってんのハハハハハ!!!』
「さっきからお前何で笑ってんだよ?;」
『ブブッ!!!ふはっ!アッハハハハハハ!!』


ひたすら笑っていて話になんねェ・・・いっそ殴ろうか。

俺がそう思った時にひずには腹を抱えながら一方を指した。そっちを見ると少し離れたところに、








短いフリルのピンクのワンピースを着たエース隊長がいた。








ご丁寧に頭には可愛らしい髪飾り、爪はネイルアート、微妙に化粧までしてある。しかも何故か笑顔だ。

俺は笑うよりもその現実から逃げるがごとく目を背けた。体全体を反転させた。

見ると他の野郎共も堪えきれずに笑っている。大爆笑。むしろ今まで気が付かなかったのがおかしいくらいにうるさい。

・・・何か頭痛くなってきた。


『アレッ、何でキフリ笑わないのさ!!あんなに笑えるのに・・・!ブハハハハハハハ!!!』
「・・・なァ、何でエース隊長はあんなバカみてェなことしてんだよ」
『僕が頼んだ。あの服着てただ笑って立っていてくれたら僕は嬉しいよ、って』
「・・・なんつーかもう、呆れを通り越して失望感しかねェ・・・」
『今更失望かい?エースのキャラ崩壊は今に始まった訳じゃないだろ。ブフッ』
「いつからそうなっちまったっけ・・・ああ、お前が来てからだな。うん、全ての元凶はお前か」
『元凶だなんて〜、やめろよ照れるぜ』
「しばいてやろうか」


俺もうコイツの事心配しねェ。



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