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ALONE (時かけ 功介?)



「好きだよ」

最後に言われたのはいつだったか。それよりも言われた時の事ですら記憶が薄れ、覚えていない。

思えば、いつもそうだった。言うのも私から。ねだるのも私から。そうか、私はただ甘えていただけで向こうは何とも思っていなかったんだ。

観月はぼんやりと思った。なら、私はこれからどうすればいいのだろう。

独り彼の名を部屋でぽつりと呟く。ぽっかりと穴の開いた心臓を観月はどうする事もできず、天井を眺める。

観月、最近病んでるね」

学校で真琴に言われた言葉。観月は確かにと思った。最近、恋がしたくてたまらない。

いや、恋をしたいんじゃないんだ。ただ、誰かとすべてを分かち合いたい。観月は真琴にいい男がいないか、と聞いてみた。

「いい男?観月。男なんてろくなの居ないんだからさ。野球やらない?千昭たちと」
「そんなおばさんみたいな事言ってないで真琴も彼氏つくればいいのに」

観月が聞くと真琴はそんなの考えた事なかった、と目を丸くしていった。

「間宮はどうなの?男前じゃん」
「なら、観月。千昭と付き合えば?」

「は?あんた馬鹿?間宮はどう見たってあんたの事が――うがっ」

何者かに遮られたかと思えばそれは張本人、千昭だった。

「おい、沢村。何言っちゃってるわけ?」

間宮は真琴の事を好きだって言おうとしたのに、こいつが後ろから来て口をおさえるものだから観月は千昭を睨み付ける。

「間宮、ふざけるな。お前もとっとと言えばいいのに、この馬鹿が気づかないから言ってやろうとしただけじゃないか」
「てめぇがふざけるなよ」
「は?へー、人の親切無駄にするんだ」

顔を近づけて至近距離でお互いを眼つける。

「千昭と観月って仲いいんだね。付き合っちゃいなよ。」

真琴が理解不能な言葉を発する。

「「どこがだよ!!何でこんなやつなんかと」」
「ほら、息ぴったし」

お互いがお互いに黙る。だが、視線ははずさないまま。

「真琴。あんたこんな男に誑かされたら駄目だからね。」
沢村。お前もう黙れ」
「それじゃ、あとはお二人で仲良くしな」

観月はそれだけ言い残して、千昭と真琴から離れる。いいよな、あれだけ仲いいと。いい男いないかな。観月が窓を眺めていると津田功介が声をかけてきた。

「なぁ、沢村って千昭の事好きなのか?」
「いや、間宮を好きになるだなんて転地がひっくり返ってもありえない。それにあいつには真琴がいるし」

観月がそういうと功介は穏やかな笑みを浮かべて空を見た。雲ひとつない爽やかな空で、功介はそれを見てまた笑みを深める。

「なんだ、沢村も気づいてたのか」
「間宮の視線見てれば分かるって。津田はどうなの?」

「何が?」
「好きな人とか。あの二人いつかくっ付きそうだからさ」

「んー。居ない、な」
「あの二人がくっついたら三人で野球できなくなっちゃうね。あ、そうだ。いい男知らない?最近居なくてさ」

観月が聞くと功介は心外だとばかりに目をぱちぱちとさせる。

「目の前にいるのはいい男じゃねえのか?」
「考えた事ないし」

観月は功介を上から下までじろりと見る。

「うーん。確かに?」
「疑問系かよ」

ははっと功介が笑う。

「なら付き合っちゃう?」
「いいんじゃね?」

こんな軽いノリで付き合っていいものだろうか?観月はそう考えたものの、今までで一番楽しくなるかもしれないと思った。



ALONE



(私たち付き合う事にした)
(は?おい、オレはどうすればいいんだよ)
(間宮はヘタレを直せ)
(お前、オレの扱い酷くね?)


2010/10/01





あきゅろす。
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