遠回りな未来
自分の気持ち H
寝込んでる間、慧だけじゃなくて柚原先輩の事も夢に見たんだ。
心のどこかで柚原先輩の事が引っかかってるのは確かみたい。
でも…それを何て表現すればいいの…?
海へ行ったあと、柚原先輩にもう会わないって決めた時も心の中にはもやもやした気持ちがあった。
もしかして…。
「あ、じゃあ僕は用事があるから」
「……えっ?」
慧の唐突な話題転換に、僕は思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。
そんな僕をよそに慧はさっと立ち上がった。
「明日は、出て来るでしょ…?」
「あ…うん」
「ほんとはね、すごく寂しかったんだ…」
照れくさそうに言って、慧はくるっと背を向けた。
「じゃあ、また明日!」
最後に手を振って慧は病室を出て行った。
思わず、ほっと息が漏れた。
ってか、姉ちゃんも慧も唐突なんだから。
ついて行くのに苦労するよ、ほんと。
でも、そんな二人の性格がが実は羨ましかったりするんだけどね。
そんな事を思っていると、ドアがノックされた。
姉ちゃんかな?
ノックするなんて変なのー、って思いながらも後で何を言われるかわかんないから、一応返事をした。
ドアの開く音がしたけど、僕はたいして気に止めなかった。
暇だから姉ちゃんが置いて行った雑誌を手に取ってページをめくった。
「姉ちゃん、売店行ったんなら僕の分も何か…」
そう言いながら顔を上げて、現れた人影に目を向けたら僕の言葉はフェードアウトして行った。
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