遠回りな未来
自分の気持ち G
「な…っ…何…?」
慧が驚いた顔をしたけど、僕は気にしなかった。
「僕はもういいんだ。中学の時にたくさん良い思いをしたから…。今のはね、柚原先輩の間接キス」
「………」
柚原先輩っていう言葉に反応したのか、慧の表情が少し曇る。
だけど、慧は何も言ってくれなくて…。
「慧?」
「僕ね…柚原先輩にフラれちゃった…」
一瞬慧は嗚咽をあげそうになったけど、ぐっとそれを飲み込んだ。
目を伏せた姿はとても悲しそうで…。
僕は驚きを隠せなかった。
慧ってもっと外堀を埋めてから告白するって思ってたから。
だって告白したのって、ここ3日ぐらいの話じゃないか。
「慧、告白したの?」
黙って慧が頷く。
「柚原先輩ね、はっきり輝希の事が好きだから付き合えないって。…でも、輝希で良かったって思ったんだ…」
そこで慧は深呼吸をひとつした。
「あの柚原先輩に好きだって言われて、首を縦に振らないのって輝希ぐらいなもんだよ」
がしっと少し強めに肩を掴まれる。
「人間、素直になんなきゃ!」
「や、僕は別に…」
『何とも思ってない』…って言えば嘘になるかもしれない。
実際、ほかの上級生に知り合いはいないし、海まで一緒に行ったんだから人柄を全く知らない先輩たちよりは親しいのかな…。
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