遠回りな未来
自分の気持ち F
「…ごめん…」
「え?」
慧の声はあまりにも小さくて、少し気が逸れていた僕は聞き逃してしまう。
でも慧は気にしてないようで言葉をつなげた。
「僕…酷い事を言って、輝希を傷付けた…」
「ちがっ、あれは…」
言いかけた僕の言葉を否定するように慧は強く首を振った。
だから僕は口を挟めなかった。
「いいんだ…っ」
慧は絞り出すように言って肩を震わせた。
「ほんと…ごめ…っ」
下を向いている慧の視線の先、ベッドシーツにポタポタと水滴が落ちる。
落ちた水滴は小さく広がった。
僕はどうしたらいいのかわからずに、しばらく慧を見つめていた。
数分後、慧はしゃっくりをあげるだけにおさまった。
僕は傍に置いてあったティッシュを取って慧に差し出した。
そこで慧は初めて顔を上げた。
「涙拭きなよ…」
「っ…うん…」
おずおずとティッシュを受け取った慧は、鼻をすすりながら涙を拭いた。
「…慧は悪くないよ。元々僕のせいなんだから」
「………」
「ちょっとココ座って?」
ふと思い付いた事があって、僕は指で傍に座るよう示した。
不思議そうな顔をしながらも傍に座った慧の唇にキスをした。
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