3-4 《校内を逃走中の猫を捕まえなさい! 部活は一時中断、協力したクラブには予算優遇します。 そして、猫を捕まえた人にはスーパーなラッキーチャンス! 生徒会メンバーからキッスのプレゼントが〜!!》 校内に響くミレイの高笑い。 ボーっとそれを聞いているスザクに、今しかないとあたしは駆け出した。 「ごめんスザク! あたし行かなくちゃ!」 派手にコケるルルーシュを見たいのもあるが、それ以上にスザクとの気まずさから逃げたかった。 《猫を! 猫を捕まえたら、所有物は私に!! 所有物は私に!!!》 「行かなくちゃいけないって………もしかして君の猫?」 逃げたはずなのに、スザクはあたしの真後ろを走っていた。 「わぁああぁあ!! ちょ…ついてこないでーーーッ!!」 驚きに思わず叫べば、スザクはシュンと悲しげな顔をした。 「ごめん訂正する!! 訂正するから!! でもあたしは一人で大丈夫だからお願いついてこないでーーっ!!!」 「僕も手伝うよ!」 人 の 話 を 聞 け !! 《にゃ〜》 ナナリーの猫の鳴きマネに、校舎のそこかしこで『萌えーー!!!』的な歓声が沸き上がる。 と、いうことはルルーシュとスザクが鉢合わせるまでもう少しってところか。 「(ルルーシュの目線では確か………猫が登れるような屋根だよね)」 必ず、そこを猫が通るはすだ。 「いた! あれだよ空!!」 屋根をつたうように走る猫が遠目に見える。 ゼロの仮面は距離が離れているため『黒っぽい何か』にしか見えなかったのが幸いだろう。 猫は屋根から飛び降りて近くの建物――――頂上に鐘がある塔へと入り込んだ。 それを確認した途端、死角からルルーシュが飛び出した。 「ルルーシュ!! 君も猫を?」 「なッ スザク?!」 スザクとルルーシュは塔の入り口で足を止め、不意打ち的な遭遇にお互い動けずにいた。 だけどそれも一瞬だけ。 塔の中から反響する猫の鳴き声に、スザクがいち早く駆け出した。 次はあたし。 遅れてだがルルーシュも走り出す。 「待てスザク! くっ、お前は帰れ!猫は俺が…!」 「体を動かすのは僕のほうが得意だよ。 前に小鳥が逃げた時だって…」 「古い話を持ち出すなっ!」 「たった7年前だよ!」 軽い足取りで階段を駆け上るスザクと比べ、ルルーシュはもう息切れをし始めている。 体育会系のスザクと文系のルルーシュとでは体力の差は一目瞭然だった。 距離がだんだん離れていく。 「くぅ!! 相変わらずの…体力……バカ…っ」 ルルーシュのスピードがだんだん落ちてきた。 あたしはと言うと、数段飛ばしでまだまだ絶好調である。 最上階へはすぐに到着した。 そこは思ったよりも広くなく、視界に入ったのは外に続くであろう出口が二つ。 一つは、目の前で開いた窓。 もう一つは、重そうな鉄色の扉。 猫は目の前の窓から外に出たのだろう。 迷わずそれに続くスザクの後ろ姿が見えた。 と、同時にルルーシュもやっと最上階に到着。 「俺はスザクを足止めする!! お前はそっちの扉を使え!」 「わかった!」 飛びつく勢いで鉄の扉を押し開ければ、幅の小さな階段が上へと伸びていた。 鐘の手入れをする職員のための階段だろう。 音を立てずに素早く階段を上がれば、鐘に陣取られたスペースでくつろぐ猫が気配に気づいてこちらを向いた。 逃げられたらどうしようという不安に動きを止める。 だけど、猫はうにゃあと鳴いて近づいてきた。 すぐに抱き上げ、ホッと一息つく。 「よかったぁー。 スザクみたいに拒否られたらどうしようかと思ったよ」 ゴロゴロ喉を鳴らす猫から仮面を取る。 ひとまず鐘が陣取るスペースに隠しておこう。 そして彼らに、捕獲したことを伝えなければ。 [Back] [*前へ][次へ#] |