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第1話 Side:ルルーシュ

放課後。
と言っても、クラブ活動が終わってまだ間もないから外は明るい。

アッシュフォード学園生徒会副会長のルルーシュ・ランペルージが手に持つ薄い冊子は、生徒会の企画書だ。
名前の割に、中身は全校生徒を巻き込むハタ迷惑なイベントしかつづられない。
そのハタ迷惑なイベントの許可を貰うために、ルルーシュは職員室を目指していた。

「最有力候補が男女逆転祭りか」

ページの先頭に書かれたその案は去年好評で幕を閉じたイベントだ。
だからこそ、教師がそのイベントを了承する確率はかなり高い。

「了承したが最後。
強制参加だから尚更タチが悪………おっと」

グチをこぼしつつ、歩きながら冊子を片手で開いたのがいけなかったのだろう。
ルルーシュの手からポロリと冊子が滑り落ちた。
人がいないせいか、落ちた音すら大きく響く。

何をやってるんだ、と落とした自分自身にルルーシュはため息を吐いて冊子を拾う。
顔を上げるなり視界に誰かが映った。
つい今し方まで誰もいなかったはずの視界に。
寒くもないのにゾクリと背筋が粟立った。

「(……………いつの間に?)」

こちらに背を向けて立っている黒い髪の女。
背丈は自分より低く、見たことない制服に身を包んでいる。

『日本』では死者の魂が生前の姿で思い入れの深い土地をさ迷う言い伝えがあるらしい。
ルルーシュは幽霊の可能性を考えたがすぐに否定した。
ひたいに浮かんだ冷や汗を拭う。

「(なにが幽霊だ。
馬鹿馬鹿しい)」

目の前にいる彼女はどう見ても人間だ。
幽霊と思ってしまうほうが失礼である。
制服が違うのも、アッシュフォード学園の制服をまだもらっていないからだろう。
彼女は転入生だとルルーシュが結論づけた時、

「やったー!!
マリアンヌさんありがとう!!」

その女は自分とナナリーと会長と理事長しか知らないはずの自分の母親の名前を口にした。

「(マリアンヌ………だと?)」

一瞬、ルルーシュは呼吸すら出来なかった。
だが、冷静さを取り戻すように頭を振る。

「(なにを動揺しているんだ。
ただ、マリアンヌという名前の知り合いが彼女にいるだけのこと)」

ルルーシュは自分自身に言い聞かせる。
だが、目の前の女はルルーシュの予想を斜め上へ突き抜けるようなことを言った。

「んー…。
…でも、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだし…」

思ったことをそのまま呟いたような女のそれに、ルルーシュは鈍器で頭を殴られたような衝撃を受けた。
彼の中で生まれたのは、自分が今まで隠し、守り抜いてきたものを崩されてしまう恐怖。

ルルーシュは








彼女を
『敵』と判断した。



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あきゅろす。
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