BL小説「虜」
不安
あの後。
ハービィは、気付いたら、自分達に与えられている部屋の中にいて。
あの場から、どこをどう通って、此処へと帰ってきたのか記憶に無かった。
今、ハービィの頭の中は、疑問符でいっぱいだった。
(…フィラムの奴…相手が誰だか、分かってないなんて…訳ねぇわなぁ…)
だって、あれは。
あの時の二人の距離は、相手がどんな立場か分かっているからこその距離。
(……なんでなんだ…?)
(…フィラム…)
ハービィには、愛や恋は分からない。
だが、だからといって、身分の差が生み出す悲劇を知らない訳ではない。
幾らなんでも、相手が悪すぎる。
ハービィは、人知れず。
フィラムのこれからを案じた。
日だまりの様に、温かな笑顔を持ったフィラム。
出来るなら、傷付いてなんて欲しくはない。
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