BL小説「虜」 2 一方、この時のアリファエルは、セネガルが自分に対して、そんな事を思っているなんて知りもしなかった。 それよりも、別の事を考えていた。 (父上。貴方は、とうとう決められたのですね) どこかで、予感はしていた。 幾ら、自分が皇太子という立場にあるとはいえ、この国へと、バイスが同行した時点で、どこかおかしかったのだ。 普段、皇太子である自分の警護は今、目の前にいるセネガルが所属する第二師団が主に担当している。 なのに、出立の間際になって、同行者が第二師団団長ではなく、バイスに変わっていた。 その時は、妙な事もあるものだなと、そんな程度に、思っていた。 だが、今この時になって、アリファエルは気付かされる。 バイスは、ガーメイル帝国第一師団団長という立場にあるが、それとは別に四大名家が一つガウディース家当主という顔も持つ。 バイスという男はガーメイル皇帝の‘剣’。 (母上。貴女という方は些か、やり過ぎたのです) 少しの憐憫を持って、アリファエルは、そう思った。 妄執に取り付かれし、憐れな女。 いつからか、アリファエルは、産みの母をそう思うようになっていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |