BL小説「虜」
3
相手が確実に自分を視界に入れた瞬間があった。
存在を気付かれてしまった。
一瞬、また昨日と同じ様に、逃げられるだろうか?と、諦めの感情がアリファエルを支配した。
しかし、相手は一瞬の間の後、また静かに歌い出した。
視線がアリファエルへ向いていた。
茂みから、踏み出す勇気が持てない。
踏み出したら、逃げてしまう。
初めて、もどかしさという感情を知った。
薄明かりの下。
キラキラと輝く銀髪。
(綺麗だ…)
と、素直に感じた。
月明かりの下だからこそ、その輝きは映えていた。
そこで、アリファエルは思った。
あの父上も、太陽の輝かしい光よりも、月の冷たくも、優しい光の下が、よく似合う人だなと。
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