BL小説「虜」 2 一方、見られる側の相手も、少し前からアリファエルの存在に気づいていた。 思えば、今日は空気が違っていた。 誰かが居ると告げていた。 そして、歌い出してすぐに、気づく。 自分と変わらないぐらいの歳の人間が、茂みの向こうに居る事を。 その相手は、ただ歌を聞く為だけに、そこに居た。 決して、一定以上は踏み込んでは来ない。 不思議な時間が流れた。 (なんで…歌ってんだろ…?) 誰にも聞かれたくないから、こんな時間に、この場所へ来たのに。 (…多分、昨日も来た子だよね…) 何故か、気を使われている。 そう感じた。 それが不快じゃない自分が居て、不思議な気持ちになって、自然と歌へ感情が入る。 [*前へ][次へ#] [戻る] |