BL小説「虜」
ただ君を想う
私は、常にそなたの事を想う。
日の光りを浴びて、輝きを増していた長い金の髪。
空を溶かしたかの様なスカイブルーの瞳。
そなたは、言っていたな…。
『皇族と貴族は自分の人生を好き勝手には、生きれない生き物。だから、私は貴方の背負うその苦労を少しでも、分かち合いたい』
共に分かち合った時間は、短かった。
だが、今思えば…。
あの頃が、一番幸せであったのだな。
そなたは、人生を悟り切った顔を多く見せたが、稀に見せた微笑みは誰よりも美しかった。
『ゼル。私は……貴方が好きだよ』
そなただけが、私を『ゼル』と呼び。
私も、私だけがそなたを『フィア』と呼んだ。
それは、二人だけの愛称。
それは、二人の数少ない秘密。
その名で呼ばれる間、私達は互いの置かれた状況も立場すらも忘れていられた。
互いが互いの為に、存在できた。
しかし、人生とは楽しい事ばかりではない。
時は無限に有る訳ではなく、子供はいづれ、大人になる。
そして。
成長した私達は、それぞれ。
私は次期皇帝という地位の重みを背負い。
フィア…。
そなたも、その身に重き定めを背負っていたな。
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