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BL小説「虜」
血塗れた剣の心と陰の剣の心
セネガルは一人、部屋の中で、月を見上げる。



こんな満月の夜だった。


自分の人生が変わった夜、続くと信じていた幸せを失った夜。







セネガルは決定的な別れを経験しながらも、未だにバイスへ愛を忘れられずにいた。


愛しさと切なさが胸に込み上げる。


強く己を律しなければ、その感情に負けてしまいそうになる。





血なまぐさい家系に生まれた故に、セネガルは誰よりも、幸せを模索した。



そして、セネガルはその念願を叶えた。



愛する人を見つけ、可愛い二人の我が子にも恵まれた。


だが、その幸せは長く事は続かなかった。







今の自分、過去の自分。

その違いはあまりにも大きい。



過去の自分には、愛があった。


だが、今の自分は、愛を失っている。





取り戻したくとも、取り戻せない。






だから、狂おしい程の愛情を押さえ込む。



もはや、過去の愛など忘れ去ったと、今を生きる姿を貫く。






真実をウソで固めて、与えられた役割をこなす。




幾ら、自分の心が悲鳴を上げようと、気付かぬフリをする。




偽りの自分で、太皇太后の剣として、生きてゆく。
























久しぶりに、バイスは自室で、酒を飲んでいた。


真面目一辺倒に見えるバイスだが、こうみえて、大の酒好きである。









グラスを傾けながら、バイスはある事を思い出した。





今、バイスが飲んでいる酒。


それは度数が低く、口当たりの甘い果物酒。




それは昔、セネガルが好んで飲んでいた酒であった。






過去を捨てた気でも、時折、無意識に行動してしまう。



二人で、この酒を酌み交わした事が頭に浮かぶ。







忠義故に、掛け替えのない愛を捨てる決断をした。


しかし、切っても切り捨てられない何かが胸にある。




忘れたフリをして、誤魔化してきた。





かって、守ろうと決めていた相手。



だが、その決意は果たされないモノとなった。




愛という名の炎は、消した筈だった。



しかし、本当には消えない。





今でも、過去を思い出す度、胸が苦しくなる。



愛しさが胸に込み上げる。


セネガルを想う。





出会えた幸せを思い出す。


だが、そんな感情を振り払うようにして、バイスは生きる。








自分を殺して、皇帝の剣として、生きてゆく。







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あきゅろす。
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