BL小説「虜」
美しき悪女の企み
マリアテレーズは、離宮の庭にあるカウチに横たわり、月を眺めていた。
この頃、目を閉じれば、頻繁に昔を思い出すようになった。
未来を信じていたのは、もう随分と昔のことだ。
幸せになれると信じていた頃も確かにあった。
もしも、昔の自分が、今の自分を見たなら、なんと言うだろうか?。
あまりの未来に、絶望するか、それとも、納得するか、それは分からない。
ただ、言えるとしたら、自分は幸せを失っただけ。
かつて、恋を失って、愛を引き裂かれて、何の希望も、抱けなかった時期があった。
だからだろうか、残酷な現実を前にして、強くなる為に、権力を得る事を選んだのは。
稀代の悪女。
国内外で、自分がそう言われているのをマリアテレーズは知っている。
だが、マリアテレーズは、国を傾けたわけでも、財政を破綻させたわけでもない。
しかし、マリアテレーズの生き方は、貴族からも畏れられ、皇族からも畏れられ、商人達からは尊敬の念を向けられる。
飴と鞭を上手く使い分けて、マリアテレーズは、権力を得てきた。
だが、最近は、そんな自分の人生に、虚しさを感じる時がある。
間違った道を歩んでいるのではないか?
と、最近では思うこともある。
だが、何をどう思った所で、何が変わるわけでもない。
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