BL小説「虜」
相いれぬ二人
アリファエルが母親の廃妃を知った頃と時を同じくして、ガーメイルでは、二人の女が静かに睨み合っていた。
片方は太皇太后マリアテレーズ。
もう片方は皇太后シュレーナ。
マリアテレーズの居室で相対する二人。
最初に、会話の口火を切ったのはマリアテレーズ。
「シュレーナ」
「はい、お義母様」
「あの女、廃されたな」
「そのようですね」
「シュレーナ。お前は、あの女が廃されて、どう思う?」
マリアテレーズは、そう聞きながらも、シュレーナの出方を楽しんでいた。
「特に、何も思いません」
そう答えるしか、シュレーナには出来なかったが、内心では。
(わたくしは…確かに、彼女のありようには疑問があった。けれど、それは陛下の彼女への冷遇が招いた事態ですのに廃妃だなんて…)
と、思っていた。
しかし、すぐに、そんなシュレーナの心を読んだかの様に、マリアテレーズは言う。
「シュレーナ。お前が何を考えようと、それはお前の自由。でも、お前も知っているとおり、陛下は公平なお方」
「………」
「陛下のやり方に、間違いはない」
目を伏せ何も言わないシュレーナ。
すると、マリアテレーズは更に言う。
「シュレーナ。まさか、お前、あの女に自分を投影していたのか?愛されたいと、そう喚く女ほど、醜いモノはないぞ」
その言葉を聞き終えると、シュレーナは伏せていた顔を上げ、マリアテレーズを睨むように見つめて言った。
「お義母様っ!!私が、彼女に自分を投影していたなんて、そんな事は…ありませんわっ!!」
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