BL小説「虜」 3 そんなアリファエルを前に、セネガルは手の平を握り込む。 (…我が子に…こんな顔をさせる母親は最低な存在だと言えるなぁ……) セネガルは、子供は愛してやまない存在であると思っている。 (…皇妃…いや…廃妃アデリアーデ…オレは、やっぱり…アンタが大嫌いだ) アデリアーデが犯してきた数々の罪。 その中でも最たるモノ… それは… (……一体、皇子に何の罪がある…?アンタは…身勝手だ…) 我が子を道具の様に利用した事でも、我が子を愛せなかった事でもない。 彼女の罪。 (…泣きたい時に…泣けない子供ほど…哀れなものはない…) アリファエルは、自嘲気味に笑いながらも、それ以外の感情を表に出さない。 いや、出せないのだろう。 泣き方を忘れた子供。 だが、悲しくない訳は無く、ただ…涙が出ないだけなのだと、セネガルには分かっていた。 アリファエルの表に出ない悲しみが…セネガルには伝わって来るだけに、やる瀬ない気分に陥る。 だからだろう。 セネガルは、それが不敬に当たると知りながら。 「…っ!!」 「申し訳ございません…暫く…こうさせてください…」 アリファエルをソッと抱き寄せた。 まともに、親の愛を受けずに育った子を愛おしいと、自身も親であるセネガルは思った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |