小説「召喚と召還の結末」
二人の差
傭兵組織『ヒュプノス』副団長リーアネージュ。
彼女は団長ブラックとその息子グレイブ以外の人間に対して、その表情を変えない。
また敵には冷たい微笑しか見せない。
そんな彼女の信条。
それは『団長に逆らう者には、それ相応の報いを』というもの。
彼女は、他の団員達と同様に、ブラックに対して、絶対の信頼を寄せ、偽りの無い忠義と忠節を捧げている。
例え、ブラックの行いが悪と呼ばれる事であろうとも、彼女達『ヒュプノス』に属する者達には一切関係なく、ブラックからの命令ならば誰だろうと切り捨てる。
彼女達は、精練潔白を信条とする騎士ではない。
彼女達は、自らの欲求の為に戦いへと赴く者。
だからこそ、欲求の赴くままに戦う為に、倫理観や理性など、遥か昔に捨て去っていた。
バルの問いに、リーアはため息混じりに言う。
『なぁ、思わないか?この国はくだらない国だと』
しかし、その言葉は公用語ではなく、彼等『ヒュプノス』が使うタリア語で発せられた。
『ア゙?あぁ、確かにまともな国じゃねぇわなぁ…内部は腐りきってるし、旨味のねぇ国さ』
突如、異国の言葉で話し出したリーア達に周りから視線が集まる。
だが、二人は気にせず、会話を続けた。
『私は、団長の怒りを知っている。この国の上に居座る奴等は、存在そのものが悪だ』
不愉快そうにそう言ったリーアへ。
『んー、まぁ…そうとも言えるわなぁ』
と、バルは答える。
だが、リーアはさらに。
『今、私は呆れを感じている。この国の上に居座る連中はバカばかりだ、そんな奴等が団長を苛立たせるんだ。それは罪だ』
断言するリーアに、バルは。
『罪ねぇ…だが、あいつ等が居ないと今の団長は居ないぜ?』
と、諭すように言った。
『分かっている。奴等が居なければ、今の団長は居ないだろう。結果的に、奴等があの人を生み出したんだ』
その言葉には、例えようもない様々な感情が見えた。
そんなリーアに、バルは言った。
『お前のその感情は奴等に向ける訳にはいかねぇ。それは分かるよな?』
『…言われずとも、分かっている。本来なら、私がこんな感情を抱く必要がないこともな』
『だが、納得できないのだ。私達には、団長が全てだからな』
バルは。
『だな、俺達には、あの人が必要だ。今更、昔みたいな狂気だけの世界には戻れねぇよ』
と、リーアの肩を叩きながら言った。
すると、リーアは。
『お前に慰められるとは、思わなかったぞ』
と、返した。
『ひでぇな。俺だって、たまには優しいんだぜ?』
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