小説「召喚と召還の結末」 2 「私も、そう思いました。この人は楽には死なせません」 カリスは、そう言うと、ロックウェルの顔面を殴る。 「ヒィィイ゙っ…」 聞き苦しい悲鳴をロックウェルは上げる。 死を身近に感じた事など、元は軍人であったから、幾度もある。 だが、ロックウェルは、軍人時代、敵から拷問を受けた経験がない。 元々がエリート将校だったロックウェルは、戦が絶えなかった昔にも、部下から戦場の情報を聞き、陣営の奥の安全な場所で、指揮をしていただけだった。 だから、捕虜になった事もない。 戦況が悪化すれば、指揮権を一旦、側近に託し、一目散にその場から逃げ出していた。 普通の軍人が戦わずに、敵前逃亡をすれば、厳しい処分が下る。 だが、貴族生まれの上に、宰相の父を持つロックウェルは、何度、敵前逃亡をしても、厳しく罰せられる事はなかった。 「情けない人ですねぇ。貴方は元とはいえ、軍人なのでしょう?」 カリスは冷たい声音で、そう言いながら、ロックウェルを殴り続ける。 鈍い打音が辺りに響く。 複数のギラギラした視線がロックウェルに向けられる。 血の臭いが辺りに漂う中、彼等は心地よい酔いを感じてきた。 カリスは、そんな仲間達を見ながら、言う。 「さぁ、私達流の宴の始まりです。大丈夫ですよ?簡単には、死なせませんから」 その顔は、狂気に彩られている。 「アア゛ァァ…」 ロックウェルは、更なる恐怖に、身を震わせる。 [*前へ][次へ#] [戻る] |