小説「召喚と召還の結末」 2 王を見据えながら、ブラックは言葉を続ける。 「シィ。お前には分からないだろうな…どれだけの苦渋を俺が味わったか」 強い憎しみと殺意に彩られた瞳。 自分を‘シィ’と呼ぶブラックに、王は動揺を隠せなずにいた。 王は、震える声で。 「ほ、本当に…‘リュウ’なのか…?」 と、聞いた。 すると、ブラックは吐き捨てるようにして。 「あぁ、昔は‘リュウ’と呼ばれていたさ」 と、言った。 それを聞いた王は今、この瞬間が嘘であってほしいと思った。 王の記憶の中の‘リュウ’は気弱で、優しい少年。 だが、‘リュウ’と名乗ったブラックには、優しさや気弱さなど、欠片も見つからない。 時間という存在が、彼を変えたのだと、認める自分と、彼が‘リュウ’ではないと思う自分。 相反する二つの感情が、王の中で交差する。 [*前へ][次へ#] [戻る] |