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聖王の御手のうち(本編+SS/完結)
6
 後ろに指が触れると、雨音を聞くこともなくなってきた。
 中に触れられると、体がびくりと弓なりに跳ねる。
 まるで中にスイッチがあるみたいに、そこに触れられると馬鹿みたいに甘い声が出た。
 自分の肉が立てる恥ずかしい音が、雨音に混じって耳から染みこんでくる。

「柔らかい……とろけてる。中、良い? 汐」

「ふ……ぅん……気持ち」

 いい、と言いかけて、指を噛んだ。
 涙が止まらない。
 熱くて熱くて、中が疼いてたまらない。

 それなのに、たまに正気に戻るのだ。
 乱れまくっている自分に冷水を浴びせる自分が。
 両親を追い詰めた明石を、許せないと思っている自分が。

「〜〜……」

 快感に任せて開ききった脚を閉じていると、明石がついと離れた。
 素早く下衣を寛げると、また僕の腰に手を触れる。
 片手で僕の前髪を撫であげて、額に軽いキスを落とした。
 縁が赤く染まった明石の目に、涙液が溜まっているのが見えた。

「あかし……嫌だ……」

「じっとして、力抜いてて」

 嫌、と返した言葉が声になっていたかどうかわからない。
 想像を超える質量が、僕の中に入ってきて。
 多分、短い悲鳴じみた声を上げたのは僕のほうだったろうから。

「……汐、大丈夫?」

「……。……くるしい……離し……」

「ちょっとだけ、我慢してて」

「やっ! 動かないでっ……」

 明石の肩にすがりついて息を吐く。
 涙がぽたぽた落ちていくのが、自分でわかる。

(なんで……別に初めてってわけじゃないのに……)

 明石の唇が唇に触れた。
 息をするのも大変なのに、キスでふさいだりしたら死んでしまう。
 そう思いながらも、明石のくれる赤くて熱い舌を、夢中で貪った。

 気づくと、とろけた舌先から唇を離しかけていた。
 息を吐くのと、声が出るのとで忙しくなったのだ。

 明石が腰を入れていた。
 一度受け入れはじめると、貪欲に甘い感覚を味わいだす僕の体は、僕が考えなくても自然に揺れていた。
 明石を受け入れて、悦いところを突いてもらえるように。

「明石……明石……」

 繰り返し名前を呼ぶ僕に、明石はいちいち応えてくれた。
 汐、と返してキスをくれる。

 明石がくれた絶頂に、僕は声もなく意識を手放していた。








――帰ってきてくれたの? 明石。


 小さな僕が嬉しそうに走っていく。


――もう、どこにも行かないで。離れたくないんだ……。 












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