[携帯モード] [URL送信]

ハルノヒザシ

あの後お爺さんは宣言通り、父さんの連れていってしまった。
お爺さんの手で父さんは、ひっそりと葬式をあげられ、前田家の先祖代々のお墓で眠っている。
それはあんまりだと、叔父さんが小さな位牌と持っていた写真を一枚くれて、俺は毎日それを拝んでいた。
父さんの墓前に立つのが許されるのは、一年忌、三年忌とお爺さんに呼ばれた時だけだった。
前田の名に逆らうことは、許されなかった。

「顔を上げなさい」
目の前から、厳かな声がかかる。
ゆっくり顔を上げると、お爺さんが置いてある大きな机に着席していた。
以前より大分皺も増え髪は真っ白になっていたが、それによってますます威厳を増している。
「この度は父の七回忌の法要を開いて下さりありがとうごさいます。我々兄弟まで呼んでくださった上、旅費まで与えて頂き感謝しております」
なるべくはっきりとした声で俺は感謝を述べた。
そんな俺に応えずまっすぐに嫌悪を持って俺を睨みつける視線。
その視線が横に移動した瞬間、ふと緩んだ。
お爺さんの瞳にあった嫌悪が驚愕に変わる。
「…し、き…?」
「夏月です。お爺さん」
思わずそう漏らしたお爺さんに、夏が無機質な声で言った。


[*前へ][次へ#]

17/75ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!