ハルノヒザシ 4 「はっ、ははははっ」 段々と息が整ってきたのか、大きくなる音羽の笑い声。 楽しいなぁ。ホント、楽しい! 走ってる時がなによりも! グラウンドのほぼ真ん中に大の字に転がりながら、音羽は笑い続ける。 酸欠状態で最初は何も言えなかった俺だが、あんまりにも楽しそうに音羽が笑うので、つられてなんだか笑ってしまう。 「そりゃ、よかったね」よいしょ、と音羽の隣に腰を下ろしながら言うと、「ああ!ありがとう、前田」と明るく答える音羽。 「俺、前田と走るの好きなんだよね」 「そう。何で陸上部でもない俺?」 「んー前田が必死で走ってる姿が」 自分と似てて好き。走っていると楽しい。 砂がつくことなどまるで気にせず、グラウンドに寝そべったまま いつも子犬のように生気溢れるその瞳に、夏の夕焼け空を映しながら、音羽は言う。 隣に腰を下ろしている俺には、グラウンドから昼の太陽によってこめられた熱が、じんわりと伝わってきて 熱いけど、気持ちいい。 体育座りで膝を抱えながら、俺も夕陽に目を向けた。 赤く輝く夕焼け空。 何で空は青いのに夕焼け空はこんなにも赤いんだっけ? ぼんやりと、でも何だか満ち足りたような気持ちになりながら、俺はそんなことを思う。 「なー、前田」 「なぁに?」 唐突に、俺を呼ぶ音羽の声に視線をやると 音羽と俺の影が、グラウンドに長く伸びているのがちらりと横目に見えた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |