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ハルノヒザシ
10
「はー着いたー」
「帰ってきたって感じだな」
ホテルを出て。また少し散歩して。電車乗って。最寄駅で買い物をして。そこからバスに揺られること一時間と少し。
帰省した時より大荷物で、俺と三好は今日は無事部屋に帰ることができた。
朝出てきたホテルの何分の一かっていう部屋だけど、勝手知ったる我が家にホッとした。
「あーやっぱここが落ち着くわ」
三好も同じことを思っている様子で、コートを脱いでいる。
(あー買い物楽しかった)
さっそく荷開きをして、荷物整理をして。今日は、夜は食べてきていないので、夜ご飯の準備を開始する。
(おっとその前に…)
俺は携帯を取り出して、夏に電話をかけた。ラッキーなことにすぐに夏が出る。
「もしもし、ねぇ夏ー?カニあるから食べにこない?カニ」
『マジで?豪華だね。んじゃ行こうかな、部活終ってからだから6時くらいかな』
「うん。待ってる」
ふふふ、と笑って電話を切ると、後ろから視線を感じた。振り返れば三好が俺を「しょうもないことしてるなコイツ」みたいな目で見ていた。
「今の言い方には語弊があるな」
「何言ってんのカニに間違いないでしょ」
ほら、と俺は半額のワタリガニを取り出した。
昨日のプーポッパンカレーの美味しさに感動した俺は、いつか自分で作りたいなと思っていた矢先に、見つけてしまったのだ。半額になっているワタリガニを。お陰で三好は二日連続これからプーポッパンカレーを食べる羽目になる。作ってもいい?と聞いた俺に、「俺は気にしない」、といつも優しい三好。
夏に誤解を招く言い方をしたのが面白がりつつやったこととは言え少々心苦しいけど、夏はカニも大好きだが、カレーも大好きだしまあいいだろう。
俺は鼻歌交じりにエプロンを締め、手を洗おうとして、腕まくりした時に腕時計をしていたことに気付いた。濡らすのが嫌なので、俺は腕時計を外し、とりあえずいったん箱に戻した。何回見ても嬉しいので、箱に収まった時計を見て少し喜んでから、俺のロッカーにしまう。
(さてと!)
その後張り切って俺は人生初のプーポッパンカレーを作って。
やってきた夏に「ほーらカニでしょ」とカレーを見せて、夏にも「しょうもないことしてるなコイツ」顔をされ。
色々調味料が足りないなりに作ったカレーは、昨日と全く同じとは言わないものの美味しくて。
ご飯食べた後は「ほらパンツ買ってきたよ」と夏の服を部屋中広げて見せて。
あっという間に楽しかった週末が終っていく。
片付けをして。夏を見送って。シャワー浴びて。明日の準備をしたらもう寝る時間で。
俺と三好は今日はいつもの二段ベッドの別々の寝床に潜り込んだ。
電気を消した後も、この週末が終わるのがもったいない俺は三好に話しかける。
「ねぇ」
「うん」
「楽しかったね。また二人でどっか行こうね」
「うん。また行こう。絶対」
「うん。約束ね。おやすみ。三好
「おやすみ、前田」
寝ている場所は隣じゃないけれど、俺は昨日と同じく幸せな気持ちで目を閉じた。



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