ハルノヒザシ 冬ノ夏ノ夢十夜 兄貴が三好さんとキスしていた。 向かい合って立った二人は。お互いの手を握りしめて。恥ずかしそうに顔を近づけ。目を閉じて。初々しい触れるだけのキスを交わす。 軽く触れて。離れて。目を開けて。お互いの目を見て見つめあって。 くすり、と恥ずかしそうに微笑み合い。再び、どちらかともなく唇を寄せる。 また触れて。離れて。触れて。離れて。 頬を赤く染めた兄貴が、上目使いに三好さんを見て。彼に抱きついた。 三好さんの腕が兄貴の背中に廻る。 三好さんに抱かれる兄貴は、心から幸せそうな表情で目を閉じた。 ぎゅうっとたっぷり抱き合った後。 兄貴がねだるような視線を三好さん向けて、三好さんの頬にキスをして。また視線を合わせて、ふっと微笑んでから、ゆっくり目をつむる。 三好さんは兄貴に応えるように、再び兄貴の唇に自らの唇を寄せて。 軽いキスを繰り返した後、ぺろりと兄貴の唇を舐めた。 兄貴の唇が軽く開いて、兄貴の腕が三好さんの首に回される。 1回。2回。3回。…繰り返されるごとに口づけは段々深いものになって。 顔を真っ赤に染めた兄貴の唇から、赤い舌が覗いて。吐息が漏れた。 快感で崩れそうになる兄貴の身体を三好さんの腕が抱き支えて。 また、深いキスを繰り返す。 兄貴から。三好さんから。 何度も。何度も。 飽きることなどないように。 兄貴の上気した頬。艶っぽい眼差し。濡れた唇。力がこもる白い腕。時おり跳ねる身体。寄せられる腰。 汗だくになって布団から跳ね起きた後も。 現実じゃないものなのに、光景が脳裏に焼きついていて。 俺は、まだ暗い室内で大きな溜息をついた。 この頃見たくもない夢ばかり見て。 現実と夢の区別がつかなくなりそうな自分が居た。 [*前へ][次へ#] [戻る] |