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ハルノヒザシ

「実は僕ね。ちょうど一年前くらいにすごいケガしちゃってね。それで休学してたんだ。今も天気が悪くなると、すごい痛くって気分悪くって…だからこないだはあんなとこで寝ちゃってたんだ。ほんと、迷惑な場所でごめんね…」
ぽつんぽつんと話し出す藤堂君。ほとんど初対面の俺がこんな話聞いてもいいのだろうかと恐縮してしまうが、話してくれた以上俺は一生懸命真剣に聞いていた。俺もその気持ち、少しはわかるから。
「だから、また春日君が通りかかったら迷惑かけちゃうかも」
えへ、と明るく笑って、藤堂君は恥ずかしそうに少し顔をかく。ちょっとだけ悲しさを孕んだようなその笑顔に、俺は何度でも手を貸したい気分になった。なんだろう、この子。少し甘えたようなところがあって、でもそこがなんか可愛くて、俺よりずっと背が高いしカッコいい男の子なのに、なぜか庇護欲みたいなのを刺激される。
「天気痛は、つらいよね…。少しわかるよ。俺も昔ケガしたことあるから」
「そう、なの…。今大丈夫…?」
「うん。体調悪い時は時々傷んだりするけど。昔よりは…。藤堂君もきっとよくなるよ。身体温めて、ゆっくり寝てね。後俺は酔い止めなんか飲んでたなあ」
「へえ。知らなかった。今後買ってこよう…。あ、でも僕の切り傷と骨折とかなんだけど、それでもきくかなあ」
「俺は、火傷だったから。同じようにきくかはわからないけど…身体が過敏になってるせいだから、酔い止めがきくみたい」
「そうかあ。ありがとう、春日君。今度試してみるよ」
俺、持ってるから今度あげるよ、と俺が言った瞬間、藤堂君の携帯が鳴った。ごめんね、と断った後、藤堂君が手袋をはめたまま電話に出る。
「…うん、ちょっと出てた。すぐ、戻るよ…。あはは、怒らないで」
どうやら勉強教えてくれている人が探して電話をかけてきたみたいだ。呼び出されちゃった、と藤堂君が立ち上がる。
「ありがとう。春日君。話せて楽しかった。ねぇ、ラインしてる?教えてほしいな」
「俺まだガラケーなんだよね。メルアドで良ければ」
ぜひ!と言ってくれる藤堂君に俺も携帯を出し、番号とアドレスを交換した。
藤堂君が「またね」と言いながら、にこやかに去っていくのに俺も「またね」と手を振り返して見送った。

その時俺が少しでも、藤堂君の通話画面を覗いていれば、そこに見知った名前が表示されていたことに気付いただろう。
でも、新しくお友達が出来るかもと浮かれていた俺は全くもってそんなことには気付かなかった。
(仲良く…なれるといいなあ)
ちょっとにやにやしながら、新しいく増えたアドレス帳を見返す。
(ああ。また喜介からメール来てたや)
そうして俺は喜介にメールを返してから、夕飯の支度でもをそろそろしようかと、腰を上げて呑気に屋上を後にしたのだった。



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あきゅろす。
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