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ハルノヒザシ

部屋に戻ると、三好が無心にレタスを千切っていたのでそれを使ってサラダを作り、それでもまだあったので夕飯はレタス炒飯になった。
三好曰く、千切りすぎた、と。最初は卵焼きにリトライしようと思ったが、卵が二つしかなくてレタスを千切っていたらしい。 三好の行動はいつもかわいい。
「んじゃ、いってくるね」
「いってらっさい」
裁縫道具を携えて、三好に送り出され俺は約束通り匂宮先輩の部屋に向かう。
ドアをノックするとガチャリと鍵が開く音がして匂宮先輩が顔を出した。「入れよ」とくいっと中を指差され、俺は部屋の中にお邪魔する。
「おい、誰連れ込んでんだ匂宮…」
ベッドルームに入ると、二段ベッドの上から同室の望月先輩が顔を上げてこちらに向けた。
「お前かよ…」
匂宮先輩に続いて入ってきた俺を見て、少し望月先輩が驚いた顔をする。
「どーしたんだよお前」
「あ、いえ。匂宮先輩の服のボタン付けにきました」
「なに、通い妻やってんだよ。匂宮なんかに引っ掛かっちゃ駄目だぜ。お前は三好を幸せにしてやれ」
「黙れ望月。前田、これだ。頼む」
匂宮先輩にYシャツと多分私服のジャケットを渡され、俺は裁縫道具から針と糸を取り出した。
糸通しなしですぐに針に糸を通せるのが俺の小さい特技なんだ。
「あ、あの。シャツのボタンは?」
「無いから望月のから引き千切れ」
「おい!止めろよ!!」
「じゃあ適当にあいそうなのをつけますね」
流石に望月先輩のシャツからボタンを千切れる筈もないですから…ははは。
「ふーん。うめーな」
「刺繍でもこさえそうな手つきだ」
じろじろと俺のボタン付けをするのを見る二人の先輩。 望月先輩なんてわざわざベッドから降りてきたし。
「できました」
「おーよくやった。前田。はじめてお前が使えると思ったぞ」
「そんな褒め方あるか、阿呆」
「るっせーな、寝てろよ、ハゲ」
「や、やめて下さい…」
一瞬で険悪ムードになる二人におろおろしながら止めに入る俺。
相変わらずこの二人は仲が悪いらしい…。
で、でも今は匂宮先輩怖いとこもあるけど、さっき俺の針を探してくれたり、時々勉強教えてくれたりでいい先輩だなとすごく思ってるし、望月先輩は言わずもがな。
できれば二人が仲良くしているのが見たいんだけど…。
(無理なの、かなあ…)
二人の間に何が今まであったか俺は知らないんだ、何も。
でも… わかってるけど…
(怖いよー!助けて誰かっ!!)
ビビりながらの俺の制止などなんの意味もなく、俺を挟んで黙ったまま睨み合う二人。
俺は心の中で悲鳴をあげるしかもうできなかった。


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あきゅろす。
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