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ハルノヒザシ

「やめようぜ。匂宮。前田がべそかきそうだ」
「ふん。てめーが先につっかかってきたんだろうが。げっ、ほんとだ。はんべそかいてやがる」
しばらくして、軽く息をつきながら、やめやめとでも言うように望月先輩が手を振りながらそう言うと、二人の間の空気がフッと緩んだ。
「そんくらいでべそかくな。アホか」と俺は横に振向いた匂宮先輩に頬を引っ張られる。
「…ふ、みまへん…」
ぎゅうぎゅうと容赦なく頬を引っ張れながら、俺は必死で謝った。
痛いー。涙出そう。
恐怖の次は痛みで、俺の目になみだが浮かぶ。
「泣かせてやりてー顔してんな」
匂宮先輩がそんな俺を見て、Sっ気全開の顔でニヤリと囁いた。
望月先輩は「ったくよー」と、二段ベッドの上に戻っていく。
匂宮先輩はチラッとだけ、望月先輩が後ろを向いているのを確認すると、ぐいっと両手で挟むようにして俺の顔を自分の方に向けた。
そして
「泣くな、ばーか」と囁くと「あっ」思う間もなく、俺の瞼に口づけた。
いや、なんか瞼って言うより、目に直接なんか触れたような…。 痛くはなかったけど。ゾワっとした感覚が背筋に走る。
「…ゃっ!?」
俺が驚いて息をのむと、バッとベッドの上から望月先輩が俺たちを振り向いた。
「どうした?!」
「…あ…」
「キスしたんだよ。ボタンの礼に。文句あるか?」
パクパクと金魚の真似しかできない俺に代わって、匂宮先輩が不敵に笑いながら言った。
望月先輩の目付きが更にきつくなる。
「お前なぁーふざけんなよ」
「安心しろ。別に口にはしてない。なぁ」
「は、はい…」
ベッドの上から再度飛び降りて、匂宮先輩を睨みながら詰め寄る望月先輩に、匂宮先輩はおたおたする俺の腰に手を回して抱き寄せながら、挑戦的な態度で対峙した。
あわわ、さっきの数倍ヤバイムード…。
「てめーは前田が善意で来てんのがわかんねーのか」
「だっから可愛がってやってんだろ」
「そーゆー考えしかできねーのかよ。てめぇは」
多分今までで一番くらいに怒っている望月先輩。
俺のために怒ってくれてるんだと思うとすごく嬉しいが、まずその迫力に縮み上がることしかできない。
「ふん」
そんな恐ろしい望月先輩にも全く怯むことなく、匂宮先輩は嘲るように鼻で笑った。
「てめっ!」
「そーゆー考え方しかできねーのは、てめーの方だ」
「ああっ?!」
グッと俺の腰に回した望月先輩の手に力がこめられる。
「匂宮先輩…?」
見上げた匂宮先輩の顔はまっすぐに目の前の望月先輩を見ていた。


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