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ハルノヒザシ

その日は久しぶりに浴槽のボイラー点検があるということなので、三好と寮のお風呂に入りにいった。
夏と温泉に行ったときは、久々に温泉に入った俺だったが、寮だとまだなんだか公共の風呂に入るのは怖い。
脱衣所に入り、手早く服を脱いで浴室内に入ると、誰かが入浴剤をいれたのだろう。甘い匂いがした。
俺の用意してきたシャンプーやボディソープが無くなった時点で三好の愛用のを洗面用具一式を三好が使っていいよと言ってくれ、一緒に使っているので、三好が座った隣に座った。
なんで三好の髪はサラサラなのに、同じシャンプー使ってる俺の頭はボサボサなんだろうか。
三好が身体を洗っている間、頭を洗いつつそんなことを考える。
「お先」
相変わらすなんでもするのが早い三好はとっとと洗い終え、湯船に行ってしまった。
ふわっと香る同じシャンプーの薫り。
「ま、待ってー」
俺も身体の泡を洗い流して、三好を追いかける。
「急ぐと転ぶよ」
先に湯船につかっていた三好の声が、浴室内に響く。
「……」
濡れた髪をかきあげながら言う三好の姿が 、一瞬今までにないくらい艶っぽく見えて、俺は思わず動きを止めた。
あれ…?
三好は確かにいっつも美人さんだけど…。なにか…
「…ん?」
「あ…なんでもないよ」
眼鏡をしてない三好は、俺の表情まではわからなかったらしく不思議そうな顔をする。
(気のせいか…)
いつも通りの三好の顔を見て、俺はすぐに思い直す。
「いい匂いするね」
「ああ。ラベンダーかね」
白と紫を混ぜたミルキーな色のお湯。
誰が入れたんだか、入浴剤の缶が片隅に転がっていた。
「三好は檜の匂いが好きなんだっけ?」
「風呂は檜風呂に限るよ。手入れがめんどくさいらしいけど」
「そーいや三好んちの鯉は元気だった?」
「うん。ひたすら餌投げんの楽しかった」
じーさんがさ、新しい奴買っててさ、こーんなでけー奴。
けたけたと笑う、三好。
三好とお風呂に入ったのは何回かしかないけど三好とお風呂に入るのはいっつも楽しい。
多分三好が楽しそうにするからだ。



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あきゅろす。
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