ハルノヒザシ 4 「あぁー夕陽綺麗…」 清水寺の舞台の上。手すりに腕をのせて遠くを眺める兄貴は夕陽に染まっていた。 じーっと光を映す兄貴の瞳が、キラキラ輝いて見える。 「夏のおかげだねーこんな夕陽が見れるのも」 「俺はねだっただけだもん」 「夏の誕生日じゃなきゃなかなかこんな思いきったことできないよ。プランも夏が全部たててくれたし」 ちゃっかり俺の方が楽しんじゃったかもな。ありがと。夏。 兄貴が夕焼け色の顔で笑う。 「誕生日、おめでとう。ケーキはまた後日作ってやるな」 「んーん。も、なにもいらない。もう充分過ぎるほど充分だよ」 俺、しあわせ。 俺がそう言うと、兄貴が手を伸ばして頭を撫でてくれた。 胸がいっぱいで、きゅんきゅんして、詰まりそうで、弾けてしまいそうだった。 だいすき、だいすき、だいすき。 この人が居てくれるなら俺はもうなんにもいらない。 ぎゅっと兄貴の細い体を、力の限り抱き締めたかったが、人目があるので我慢した。 「前田ぁ早く行こうぜ」 「あ、すまん」 あの日。ついぼんやりしてしまうほど、一緒に立ちたいと思った場所で。 俺と兄貴はずっと夕陽を眺めてた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |