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ハルノヒザシ

じりじりと太陽は沈んで行く。
じりじり、じりじりと。
夏の空気を惜しむかのように。
横に座る音羽のやや伏し目がちな目を縁取る睫毛の影が、揺れていた。

「俺、桃先輩に勝ちたいんだよ」

一人言のように、音羽は言った。
うん、と俺は頷く。
近頃よく耳にする下剋上という言葉。中学、高校全て合わせての先輩、後輩との対抗戦。
この峡城内でこの言葉は、三年の引退試合という意味も含んでいる。
音羽がいる陸上部でも、多分それは当てはまって
下剋上、その日限りで、桃山先輩は引退してしまうのだろう。
音羽の桃山先輩への敬愛っぷりを見ている限り、音羽にとっては凄く特別な日であることは部活に入ってない俺でも理解出来る。
ましてや…

「俺さ、そのことばっかり考えてんだよ」
こんなに遅くまで一人でひたむき練習に打ち込むほど
「そしてさ、いつの間にか桃先輩のことばっかり考えてんだよ」
こんなにも真剣にその人のことばっかり想ってしまうほど

「おかしいよな。俺、変だよな。 桃先輩に勝ちたいって思ってただけなんだ、本当に。
でも、さ。なんか違ってきてんだよ。それが。
いつからだろう。いつからなんだろう」

俺…、好きなんだ。桃先輩が」


その人が大好きな君なら、なおさらだ。

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あきゅろす。
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