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ハルノヒザシ

「はっ、ははははっ」
段々と息が整ってきたのか、大きくなる音羽の笑い声。
楽しいなぁ。ホント、楽しい!
走ってる時がなによりも!
グラウンドのほぼ真ん中に大の字に転がりながら、音羽は笑い続ける。
酸欠状態で最初は何も言えなかった俺だが、あんまりにも楽しそうに音羽が笑うので、つられてなんだか笑ってしまう。
「そりゃ、よかったね」よいしょ、と音羽の隣に腰を下ろしながら言うと、「ああ!ありがとう、前田」と明るく答える音羽。
「俺、前田と走るの好きなんだよね」
「そう。何で陸上部でもない俺?」
「んー前田が必死で走ってる姿が」
自分と似てて好き。走っていると楽しい。
砂がつくことなどまるで気にせず、グラウンドに寝そべったまま
いつも子犬のように生気溢れるその瞳に、夏の夕焼け空を映しながら、音羽は言う。
隣に腰を下ろしている俺には、グラウンドから昼の太陽によってこめられた熱が、じんわりと伝わってきて
熱いけど、気持ちいい。
体育座りで膝を抱えながら、俺も夕陽に目を向けた。
赤く輝く夕焼け空。
何で空は青いのに夕焼け空はこんなにも赤いんだっけ?
ぼんやりと、でも何だか満ち足りたような気持ちになりながら、俺はそんなことを思う。

「なー、前田」
「なぁに?」

唐突に、俺を呼ぶ音羽の声に視線をやると

音羽と俺の影が、グラウンドに長く伸びているのがちらりと横目に見えた。

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