ハルノヒザシ 7・(三好視点) 「お待ちしておりました。出来てますよ」 眼鏡屋につくとさっきの店員の甲高い声が、俺たちを出迎えた。 礼を言いながら、眼鏡を受け取り、さっそくかけてみる。 久しぶりにクリアになる視界。 ああ、そう言えば世界はこんな感じだっけ。 そんなことを思いながら、俺は後ろの前田を振り返る。 「これ何本だ」 「二本」 正解、と久しぶりに見る彼は、ニコニコと笑って俺を見ていた。 でも少しだけ、切なさを滲ませるその笑顔。 君はあれからずっとそんなカオして俺を見てたのかい? わかってたけど。わかっていたけど。 きっと、そんなカオして笑ってるんだろうなって。 まだまだ、いつも通りにはいかないんだろうなって。 金を払ってる間、じーっと俺を見ているであろう前田の視線を背中に感じながら、俺は想う。 「行くか」 「うん」 ありがとうございました、と店員の声に見送られ、店を出る俺達。 ふっと、よく見えるようになった視線を上げれば、眼鏡屋の奥にアクセサリーショップがあるのに気付いた。 「お、前田。そういや指輪買ってやってなかったな」 買ってやろうか、となるたけ明るい声で俺は前田に話しかける。 「んー、俺は学生のうちはまだそういうのはちょっと…。大丈夫、指輪なんかなくたって俺はどこにも行かないよ」 と、すぐに俺の冗談に微笑みながらノってきてくれる前田。 俺は、そんな切なさを含んだ笑顔であっても、正直ほっとした。 いいよ。前田。 やっぱり君は君。 優し過ぎて、純粋過ぎて、ハラハラする。傷付きやすくて、危なっかしくて、ドキドキする。 そんな君に気にするなっていう方が無理な話なんだろ。 今は君が気にしてる沢山のこと、君の気が済むまで気にしてくれ。 俺がとやかく言えることは、今回何にも無いから。 だけど、 君の気がすんだら、俺の怪我が治ったら せっかくの夏休みだ。 また、どっかに遊びにでも行こうじゃないか。 [*前へ][次へ#] [戻る] |