木手永四郎専用部屋(短編)
続救世主 高荷 恋様リク 「嘘」2007/07/26↑(前編)編集8/23
永四郎さんの部屋に戻って1ヶ月が過ぎた・・・
手の傷も何とか治り、跡は残っているものの生活に支障はない。
バイトにも復帰して、家に帰ると永四郎さんの為に料理を作り部屋を片付ける。
優しい永四郎さんの帰りを待つ至福の時間。
ピンポーン♪
永四郎さんだ!!
時計は深夜3時を過ぎている。
店の片付けが終わって帰るからいつもの事。
何の躊躇いもなくドアを開けた・・・・・。
「おかえr・・・・・・・・・・・」
「あんた誰?」
「・・・・・・・・・」
幸せって長くは続かないもの・・・・・ドアの向こうには綺麗な女の人が立っていた・・・。大きな荷物を持って・・・・。あたしは到底適わないスタイル。
綺麗な髪・・・・長い手足・・・・整った顔・・・・
「永四郎いないの?」
「・・・・どちら様ですか・・・・?」
「あんたこそ誰?」
まさに修羅場・・・・
この人を部屋に入れたらいけない気がした・・・・。
あたしはきっとこの人には勝てない・・・・
あたしの気持ちを知ってか知らずかその人はズカズカと荷物を部屋に押し込んできた。
無言であたしを押しのけると永四郎の部屋に荷物を入れる・・・・
「変わってない部屋ね、、、」
まるで自分の家の様に・・・・・
振舞う・・・・・
あたしは立ち尽くすしかなかった・・・・
その人はミキさんと言うらしい・・・
年は永四郎さんと同じ28歳・・・・
永四郎さんとは長い付き合いだとか・・・・
ピンポーン♪
ミキ「は〜〜い!!お帰り〜〜〜」
それはいつもあたしが言ってるセリフ・・・・・
永「ミキ・・・・・」
永四郎さんの顔が曇る・・・・・
永四郎さんがスーツを脱ぎベッドに投げると、当たり前のようにミキはクローゼットを開き、慣れた手つきでジャケットを掛けた・・・
ソファーに座って永四郎さんがため息をつく・・・。
当然のように隣に座るミキ・・・
永「どうしてミキが俺の隣に座るんです?」
ミキ「悪い?」
永「当たり前です!サワー何をしてるんです?早く座りなさいよ。」
胸が痛くて苦しくてその場から動けそうにない・・・。あまりにも二人が自然だから、邪魔なのは誰が見てもあたし・・・・
歪んでいく視界・・・あたしはこの場所に相応しくない・・・・・
永「サワー・・・・」
永四郎さんの声が遠い・・・・・
ぎゅっ・・・・・
永「サワー・・・・何も考えないで俺を信じてもらえますか?」
甘い甘い声がゆっくりと心に沈んでいく。
髪を撫でる長い指が大丈夫だと言ってるみたいに・・・抱きしめる腕が俺を信じなさいよと・・・・
ミキ「やっぱり新しい女なんだ・・・」
鼻で笑うような声・・・・
そのままその場に座り込んで永四郎さんの言葉を飲み込む・・・・・・
ミキと言うこの女は永四郎さんの元妻・・・・
2年前にミキが離婚したいと言って出て行ったらしい・・・・。
永「今さら何なんです?何か用でもあるんですか?」
ミキ「随分冷たいのね永四郎・・・別れる時いつでも戻ってきなさいと言ったのは永四郎でしょう?」
永「時間が経てば人の気持ちは変わるでしょう?」
ミキ「じゃぁその女と別れるのも時間の問題ね!」
永「サワーはキミみたいに他の男の所に行ったりしません!!別れたいと言ったのはキミでしょう?俺は十分引き止めたはずです!て〜じわじわじする・・・・」
いつもは冷静な永四郎さんがうちな〜ぐちを使うほど心かき乱されるこの相手・・・・
二人のやり取りに胸が締め付けられた。
この場に居たくない・・・・
こんな会話聞きたくない・・・・
あたしの知らない永四郎さんとの時間・・・・
付き合って1ヶ月のあたしでは到底適うはずもない・・・・
だってあたしと永四郎さんはまだ何もない・・・・
キスだけ・・・寝るときも別々・・・・
ただの同居人ってかんじなのに・・・・
ミキとは中学生からの付き合いで結婚して長い時間を過ごして・・・・
あたしとの時間の何百倍もの時間を過ごして・・・
適う分けない・・・・
一刻も早く逃げ出したかった・・・。
サワー「あたし・・・ちょっと席外すね・・・」
永「サワー」
潤んだままの瞳を隠しながら玄関に向かう・・・
携帯だけを握り締めて・・・・
永「いけません!ココに居てくださいサワー・・・・」
腕を捕まえる永四郎さんの目を見る事も出来ない。
永「サワー・・・・」
サワー「ちゃんと話が付いたら戻ります。それまで友達の家に居ますから・・・」
永「サワー・・・」
今までに見たことないくらい困った顔であたしを覗き込む永四郎さん・・・
ミキ「あたしココに住むから!永四郎とやり直すために来たの!あんたこのまま出て行ってよ!」
永「ミキ!!!いい加減にしなさいよ!俺はキミとやり直すつもりはありませんよ!」
ミキ「そんな事わかんないでしょ?気が変わることだってあるんだから!sexしたらすぐ思い出すってあたしがどんなにいい女か!」
永四郎さんに腕を掴まれたままその場で泣き崩れた・・・・もう聞きたくないよ・・・・・
あたしは永四郎さんの何も知らないのに・・・・
この人は全てを知ってる気がした・・・・
立ち上がり携帯を投げ捨て、永四郎さんの腕を振り切って雨の降り出した町に飛び出した・・・・・
外は白み始め、行く場所もなくただ雨に打たれながら歩いた・・・・
何も考えたくない・・・・・
もう何もかも消えてしまえばいいのに・・・・・
辛い・・・・・・・
なんで永四郎さんは結婚してた事言ってくれなかったんだろう・・・・・・。
当然か・・・・・・・?
あたし達まだそんなにお互いの事知るほど長くない・・・・・
キキイ〜〜〜〜!!!!!
「サワー!!!!」
横付けにされた黒いRX-8・・・・・
「凛さん・・・・・」
凛「どうしたんばぁ?こんな時間に!永四郎と喧嘩したんば?とりあえず乗るさ〜!!!」
助手席のドアが少し開いた・・・・
凛「早く!」
この人は平古場凛さん永四郎さんのお友達でよくお店に来てくれる。
凛「わんの家にくるやっし。そのままじゃ風邪引いてしまうんさ〜!!」
走り出す車・・・・あたしは無言のまま身を任せた。
明かりの灯る凛さんの部屋・・・・・。
ただいま〜と入る凛さんの家にはお腹の大きな奥さん。
凛妻「お帰り・・・・って凛!!!!また浮気!!!!!!!!!!くるしてやる!!!!!!!!!!」
凛「あい!!!!落ち着けって!永四郎の彼女やっし!!!!」
あたしの尋常じゃない顔色を見て奥さんは急いでタオルを差し出してお風呂を用意して優しく労ってくれた。
シャワーを借り奥さんの服を借り暖かい飲み物を頂く・・・・。
時計は午前8時・・・・・
凛「何があったんば?」
二人にゆっくりとこれまでの話をした。
涙が止まらなくてボタボタと零れ落ちる。
凛妻「ミキさん戻って来たんだ・・・」
凛さんと奥さんはミキの事を少し話してくれた。
そして思いもよらない事実を聞かされた。
凛「永四郎は知らないんやッしが、ミキは男が出来て出て行ったわけじゃないんば〜よ・・・。2年前は調度永四郎のお店結構やばくてさ〜。ミキの家は金持ちだから商売一つ上手くやれない男には任せられないって無理やり別れさせられたんど〜・・・・。」
サワー「そうなんですか・・・・」
好きなのに別れたんだ・・・・。
傍に居たいのに離れなきゃいけなかったなんて・・・
きっと永四郎さんが待ってるって信じて戻ってきたんだ・・・・・・。
永四郎さんがこの事知ったらミキさんを選ぶ・・・
あたしはこのまま消えた方がいいんだ・・・・
適いっこない・・・・・
諦めるしかないんだ・・・・・・
でも・・・・・・
あたし永四郎さんを愛してる・・・・・
凛「サワー・・・・ちゃんと話し合って決めた方がいいさ〜 軽い気持ちではミキに取られてしまうんど〜!」
頭が混乱して上手く話せない・・・・
でも決めなきゃ・・・・・
愛してるから身を引く・・・・・・?
愛してるから傍にいる・・・・・・・?
永四郎さんはどっちが幸せ・・・・・・・?
どうしたらいいのか結論は出ない。
自分がどうしたいのか分からない。
考えれば考えるほど混乱していく・・・・。
凛妻「サワーさん・・・帰って話したほうがいいよ!二人の事なんだから。ねっ!」
サワー「はい・・・・」
凛さんの車で家まで送ってもらいマンションの入り口まで来た。
数時間前まで幸せだった場所・・・・。
今はこの扉を開くのが怖い・・・・。
ガチャッ・・・・・・
静まり返った部屋・・・・・・
なにやら争った跡・・・・
部屋中滅茶苦茶・・・・・
何これ・・・・・
あたしの部屋も滅茶苦茶・・・
クローゼットからは全て荷物が出されグチャグチャになって・・・・・
永四郎さんとの一枚だけの写真も床で粉々になっている・・・・・・。
あたしのお茶碗・・・コップ・・・皿・・・全て割れていて・・・・・
あたしのいる場所はもうないんだと思うしかなかった。
散乱するモノを避けながら、永四郎さんの部屋に近づく・・・・・
心臓がナゼがドクンと音を立てる・・・・・
ドクン・・・・・・・・・・
ドクン・・・・・・・
少しだけ開いたドアの向こうには・・・・・・
服が脱ぎ捨てられ床に散乱・・・・
裸で横たわる二人の姿・・・・・・
話し合うまでもない・・・・・・
あたしは負けたんだ・・・・・
完全に・・・・終わった・・・・・・・
自分の部屋に戻り必要なモノだけをカバンに詰め家を後にする。どこかで分かっていたこうなるんじゃないかって事・・・・・。永四郎さんが必要なのはあたしじゃなくてミキだって事・・・・涙も出ない・・・・・鍵を閉めポストに入れた・・・・
そのままあたしは友達の家に転がり込んだ・・・。
バイトだけは行かなくちゃ。
今日で最後にしよう・・・・。
携帯も解約して新しいものを買って親に明日帰るからと告げた・・・・。
夕方お店に向かういつもと変わらない大好きなバイト先・・・今日でお別れかと思うと寂しい・・・・。
初めてココに来て永四郎さんに助けてもらった日の事が鮮明に思い出される。
電車での出来事・・・・初めてあった日のあの優しい瞳忘れられるわけがない・・・・・・。
ロッカールームで着替えホールで接客をこなす。
いつもはもう永四郎さんもお店にいる時間なのに・・・・・・。
ガチャッ!!!
永「遅くなってすみません!」
店の裏口が開き永四郎さんが入って来た。
あたしは顔を見るのが辛くてホールを歩き回った。
お客様に失礼の無い様精一杯の笑顔で・・・・
店員1「ゴーヤーさん!店長が怖い顔で呼んでるよ!」
キッチンを恐る恐る見ると手招きする永四郎さん・・・・・・仕方なくキッチンへ向かう・・・
どんな顔すればいいの・・・・今どんな顔してるの・・・・・泣いちゃいけない・・・・
手を握り締めて一歩づつキッチンへと近づいた・・・
永「ゴーヤーさんお話があります!」
あたしの腕を掴むなり裏の事務所へと向かった。
心臓が激しく脈打って息苦しい・・・・
泣きそう・・・・
事務所に入るなり両腕を掴み壁に押さえつけられた。
顔が近づくと低い声でゆっくりと問う・・・
永「探したんですよ!どこに行ってたんです?」
「凛さんの家にいました。」
涙を堪えて俯いたまま答えた。
永「二人で話がしたいんです。お店が終わるまでココにいてくれますね?」
凛さんから聞いた話が頭の中をグルグルと回る。数時間前に見た光景・・・・。
今さら何を話すの?
探した・・・・・?
ミキとベッドにいたのに・・・・・・?
今さら改まって別れ話?
「ミキとやり直したいんです・・・分かってください・・・・」
どんな顔であたしに言うの?
サワー「もう話す事なんてありませんから。」
永「サワー・・・・・どう言う意味です?」
サワー「言わなくてもわかるでしょう?あたし朝家に帰りました、、、話がしたくて。でも・・・・っ・・・・永四郎さんはベッドで・・・・・ミキさんと・・・・・裸で抱き合ってた・・・・あたしだって馬鹿じゃないです・・・永四郎さんがミキさんを選んだのくらい分かります・・・・・」
永「サワー・・・・誤解です・・・・・ミキとは何も・・・」
サワー「何もない?あんな情況で?馬鹿にしないでよ・・・・」
永「サワー・・・お願いです!話をさせてください!」
そんな言葉も耳に入らない・・・・・
必死に掴まれた腕を振りほどこうともがく・・・
適うはずないのに・・・・
何もかも誤魔化してるようにしか聞こえない・・・・
何を信じろって言うの・・・・?
裸で抱き合ってたのに何も無いなんてありえないでしょ?
今さら・・・・
何を・・・・
話すの・・・・・・・・???
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