木手永四郎専用部屋(短編) 続救世主 高荷 恋様リク 「嘘」2007/7/26↑(中編)編集8/23 永「サワー!!お願いです話をさせてください」 振り切ろうとするあたしを制止するように強く抱きしめた。早い鼓動が伝わってくる・・・・ ホントは信じたいよ。でもあんなの見たら・・・・・ もうヤダ・・・・・・ 永四郎さんの腕の中で涙が枯れるまで泣いた。 永「サワーをこんなに泣かせてしまう俺は最低ですね・・・・でもサワーを離したくないんです。失いたくない・・・・」 じゃぁなんでミキと・・・・・・ 永「仕事が終わるまで待っててくれますか?」 耳元で震える吐息に頷くしかなかった。 今さら話す事なんてないはずなのに拒めない。 まだどこかで期待してるから? 心の片隅でホントは何も無いんだと信じてるかも・・・ 腕を緩め真っ直ぐに見つめる瞳・・・ ゆっくりと唇が近づいて・・・・ 触れそうな距離・・・・ 心臓は音をタテテいたけど、今のあたしは受け入れられず無意識に顔を背けた。 永四郎さんの腕から離れトイレに駆け込みグチャグチャになった顔を洗った。 酷い顔・・・・ 化粧を直し気合を入れてホールに戻った。 心配する同僚に愛想笑いして忙しいホールを駆け回った。 AM3:00 店の後片付けも終わりみんな帰って行く。 あたしはロッカールームで着替えを済ませイスにペタンと崩れるように座った・・・・。 1分間がとてつもなく長く感じる・・・。 何を話せばいい・・・・・? 押し寄せる不安に押しつぶされそうになってクラクラする・・・・そう言えば今日は何も口にしていなかった。 カチャッ・・・・・ 永「サワー・・・・」 疲れた様子の永四郎さんがジュースを片手に入って来た。 テーブルを挟み向かい合う・・・ 目の前に置かれたジュースを飲む余裕も無い。 永「何から話しましょうか・・・・」 いつもより落ち着いた低い声。 あたしは俯いたまま黙っていた・・・。 永「サワーが出て行った後探しに行ったんですよ?携帯を置いていってしまったので、なかなか見つけられませんでした。しばらくして家に戻ったかも知れないと思って帰ったらミキが部屋であのように暴れていましてね・・・・少し落ち着かせて話をしました。台所のコーヒーを飲んだら急に眠くなってしまって起きたらベッドでした。信じてくれますか?」 信じられるわけ無い・・・・・ 一言も発する事が出来なかった。 ただテーブルの一点をぼ〜〜〜っと眺めて・・・ 何も考えられなかった。 何を信じていいのか分からなかった・・・・。 永「サワー・・・・本当に俺はミキを抱いていません!お願いだから俺の目を見てください・・・・不安にさせてるのは分かっています。信じろって言う方が無理なのも分かっています・・・・でも何も無いんです・・・・・」 カタンッ! イスが倒れ気配が一気に近づいた・・・・・。 すぐ傍に・・・・・・イスごと横に向けられて・・・左手があたしの頬を捕え視線を上げさせる、右手が腕を掴み永四郎さんはあたしの前に跪いた。 永「俺の目を見なさいと言ってるでしょう?」 優しくてすごく困った顔で下から覗かれると我慢してたモノがこみ上げた。必死に視線を反らせ涙を止めた。零れ落ちそうになる涙を指で拭い取りじっと見つめる深い色の瞳・・・・。初めて助けて貰った時と同じ優しい瞳・・・・。 永「俺が愛しているのはサワーだけです。」 甘い甘い声・・・・ 心が解けていく・・・・・ でも何かが引っかかって愛してると言えない・・・・ 感情がコントロール出来なくなる・・・。 サワー「ミキさんは他に男がいて別れたんじゃないんですよ・・・・好きなのに別れたんです。永四郎さんは知らないんでしょ?ミキさんは永四郎さんが待ってるって信じて戻って来たのに・・・あたしなんかが邪魔して・・・・っ・・・・事情を知ってたら永四郎さんはミキさんを待ってたでしょう?」 一気に何もかも涙と共に出てしまった。 これを聞いた永四郎さんはきっとミキさんを取るって分かってても・・・黙ったまま自分だけの幸せを考えるなんて出来なかった。 好きだから・・・・・・ 永四郎さんには幸せになってもらいたい・・・・・ たとえ隣にいるのがあたしじゃなくても・・・・・ 永四郎さんが幸せならいい・・・・・・・・ 永「誰がそんな事言ったんです?ミキですか?」 サワー「凛さんと奥さんから聞きました。」 ふう〜〜〜っと深いため息をついた永四郎さんは急に立ち上がった・・・・ 永「サワー・・・俺は帰ってミキと話をします。もし聞きたくないならココにいて構いませんが、どうしますか?」 やっぱり・・・・・永四郎さんが黙ってるわけ無い・・・・・・ これ以上見たくない。 聞きたくも無い・・・・・ でも・・・・・・ サワー「あたしも行きます。」 震える声で答えバッグを抱きかかえた。 もうあたしの知らないところで話が進んでいくのは嫌だった。どんな結論が出ようと受け止めよう・・・・ 永四郎さんの背中を追って歩き出した。 家に着くまでの車内では一言も言葉を交わすことは無くただ重い時間が過ぎた。 家に鍵を開け中に入ると・・・・ 今朝までの部屋が嘘のように片付きピカピカの室内。 あたしの荷物は全て消えていた。 ミキ「お帰り〜〜〜〜!・・・・・なんであんたまで帰ってくんの?」 永「ミキ話があります。座りなさいよ!」 張り詰めた空気・・・強張る表情・・・・・静まり返った部屋はとても居心地がいいとは言えなかった。 ミキは不機嫌な顔で座った・・・。 あたしと永四郎さんも座る・・・・ 永「ミキ・・・俺と離婚した本当の理由を言ってもらえますか?」 ミキ「今さらいいじゃんそんな事。」 永「よくない!!いいなさいよ!早く!」 ミキ「他に好きな人がいたから!」 永「本当の理由を言いなさいと言ってるんです!」 ミキ「・・・・・・凛から聞いたの?」 永「・・・・・・・キミの口から聞きたいんです!」 ミキ「そう・・・・」 ミキの表情が一気に暗くなる・・・・・・ ミキ「あたし達の結婚って元々は親が勝手に決めた事だったでしょ?もちろん好きだったからって言うのもあるけど。ゆくゆくは永四郎がうちのパパの会社を継ぐって話だったし、でも2年前はお店大変だったからパパが怒って別れなさいって、パパを永四郎が喧嘩したりするの見たくなかったの!永四郎が頑張ってやってるお店をパパに邪魔されたくなかったの・・・だから・・・・」 永「邪魔?」 ミキ「別れなければ永四郎のお店を潰すって・・・・」 ココまで言ってミキは大粒の涙を零した。 どれだけ辛かっただろう・・・・ 父親と愛する人の間に挟まって・・・・ どれだけ心が苦しかったか・・・・ ミキ「あれから2年たったし、パパも少しは分かってくれるだろうって・・・やっと元に戻れるって思ったからココに来たのに・・・・・」 永「なんであの時本当のことを言ってくれなかったんです・・・・店なんて潰されてもよかった・・・・なんで嘘なんて・・・・」 ミキ「だって・・・・あのお店は永四郎の大事な・・・・っ・・・無くなるなんて嫌だったから・・・・」 永「気付いてあげられなくてすみませんでした。」 永四郎さんの手がミキの頭をゆっくりと撫でた・・・・ あたしはただ聞いてるばかりで・・・・何も言えない・・・言えるわけない・・・あたしが思うより深いミキの思い・・・・・あたしが立ち入れない二人だけの世界・・・・・・ あたしはやっぱりココにいるべきではない・・・・・ 永「ミキもう一つ聞きたいことがあります!正直に答えてください。昨日俺のコーヒーに何か入れましたよね?」 ミキ「・・・・・覚えてないの?sexした事・・・・」 永「嘘はやめなさいよ!俺は自分が抱いたかどうかぐらい分かります!」 キマヅイ沈黙・・・・・・・・ 永「ミキ・・・・」 ミキ「・・・・・・何もないわよ・・・・何もしてない・・・・・どうしても永四郎とやり直したかったの!もう一度ココで二人で無くした時間を埋めたかったの・・・・永四郎いつでも戻ってきなさいって言ったよね?ずっと愛してるって言ったよね・・・・?」 永「確かに言いました。あの時はすぐキミが戻ってくると信じてましたから・・・・でもあれからもう2年です・・・キミは連絡一つよこさなかった。幸せになってるものだと思ってましたからね・・・・・他の男と幸せになっている女をいつまでも愛し続けていられるほど俺は強くないですよ・・・・・・俺だって幸せになりたいと望みます・・・・そしてサワーと出会った。」 ミキ「今からでも遅くないでしょう?結婚してるわけじゃないんでしょう?」 永「結婚していれば諦められますか?」 ミキ「永四郎は・・・あたしの気持ち分かってくれないんだね・・・・」 永「いくら俺でも言ってくれなければ伝わらないでしょう?」 ミキ「あの時本当の事を言ってたら・・・・・」 永「・・・・・・キミを連れて逃げたでしょうね。」 ミキ「なんで今じゃダメなの?」 ミキさんは本当に今でも永四郎さんを愛してる・・・。 永四郎さんは本気で愛してた・・・・・ 何かが狂ってすれ違う気持ち・・・・ なんだか見ていられない・・・・ 永「サワーを愛しているからです。どんな事情があっても俺はサワー以外見えません。だからミキ・・・家に帰りなさい!」 ミキはその場で号泣し始めた・・・・・ 大声で泣きながら台所に走ると手には光る刃物・・・ 瞳は血走りとても正常だとは思えなかった。 ミキ「永四郎・・・・一緒になれないなら貴方を殺してあたしも死ぬ・・・・」 包丁を振りかざし襲い掛かるミキ・・・・・ 永四郎さんならこれくらい簡単に避けれる・・・・ でも・・・・永四郎さんは真っ直ぐに見つめて動こうとしない・・・・・刺されるつもり・・・・・? ザクッ!!!!!!!!!!!!!!! クッ・・・・・・・・・・・ 溢れ出る紅い血・・・・・・・・ ボタボタと床を染める・・・・・・ ミキ「なんで・・・・・・」 サワー『悪いけど譲れない・・・・あたしだって永四郎さんと一緒にいたいの・・・・っ・・・・』 愛してるから負けたくなかった・・・・ ミキさんの愛に負けたくなかった・・・・・ どんなにミキさんが可愛そうでも・・・・・・ 譲れない・・・・・ 失いたくない・・・・ 永「サワー・・・・手を離しなさい!!!!」 ミキの包丁をとっさに掴んだあたしの右手・・・・ 血だらけの右手・・・・・・ ミキはその場に座り込んだ・・・・ 永四郎さんはまたタオルであたしの手をぐるぐる巻きにしながら怒鳴った・・・。 永「サワー!!!どうして飛び出したりするんです!俺は刺されても構わなかったのに!」 サワー「・・・・・ごめんなさい・・・・でも守りたかったの・・・・」 永「馬鹿ですね・・・・キミって人は・・・・」 サワー「ごめんなさい・・・・・」 永「謝らないでください・・・」 永四郎さんはあたしを支えながら玄関へと向かった・・・。 ピンポーン♪ ガチャッ!!!! 「ミキが来てるだろう?」 そこにはいかにも金持ちそうなおじさん・・・・ 永「お義父さん・・・・」 ミキさんのお父さん・・・・ また揉めそうな空気・・・・ もうヤダよ・・・・ こうしてる間にも血は止まることなくタオルを染める・・・・・ どんどん息苦しくなってきた・・・・・・ 足の力が無くなってく・・・・・ ヤバイかも・・・・・・ 永「サワー!!」 ガシッ!!!!!! 持ち上げられなんだか意識が途切れそうになる・・・ あたしこのまま死んじゃう? タオルから滴り落ちる血が服を染めていく・・・ 永「すみませんがお話は後で・・・・ココにいてもらって構いませんから!」 おじさんを押しのけて車に急ぐ・・・・・ 一番近い病院へ・・・・ 車内で永四郎さんは優しくあたしの名前を呼ぶ・・・ あの時みたいに・・・・・ 永「サワー・・・・何があっても離しませんからね・・・・・俺に・・・・」 この後の言葉はよく聞こえなかった。 [前へ][次へ] |