RAPTORS 4 東軍に紅色の髪を持つ人物が居たのは、後にも先にも縷紅一人だけだろう。 紅い髪は天の種族にだけ、時に現れる。大抵の人は茶髪か金髪だ。 それ故に、紅い髪は「不幸の前兆」と忌み嫌われてきた。 縷紅が捨てられ、それもわざわざ“殺されるように”東軍の門前に置かれていたのはその為だ。 東軍には地の民、特別に天を憎む者が集まっている。 彼らが八つ当たり的に天の人間――乳児を殺そうとした事は想像に難くない。 それを止めたのが董凱だった。 お陰で、縷紅は董凱の手によって、東軍の中で育てられた。 無論、殺そうとしたぐらいだからそれを快く思わぬ者の方が多かった。 紅髪(あかがみ)という仇名はそんな者達によって作られ、差別的に使われていた。 しかし縷紅はそんな事を気にする質ではない。それは董凱譲りである。 そうやって折り合いをつけながら、縷紅は東軍の中で育っていった。 そんな中、東軍に一人の男が転がり込む。 名は透錐(とうすい)。天に捕虜として捕まったところを逃げて来たと言った。 彼は東軍の一員となった。 それから三年が経ち――。 「董凱、一つお願いがあるんですけど」 夜、暇そうな董凱を十二歳の縷紅が捕まえた。 東軍は、力を蓄える為戦の手を休めている時期だった。 「何だ、言ってみろ」 「透錐という人がいるでしょう?相当太刀筋が良いと聞いたんですけど、一度手合わせしてみたくて」 「手合わせ?何故?」 「強くなりたいんですよ。いつか董凱を越えられるように」 「心配しなくても、お前はそれで十分強い。二十年後には超えてるさ」 「二十年後じゃ董凱の方が歳とって衰えちゃうでしょう!?」 「言うな」 苦々しく董凱は言う。 「とりあえず、手合わせぐらいなら許してやる。噂の真相を確かめる程度だがな」 [*前へ][次へ#] [戻る] |