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RAPTORS

 島から鶸達の待つ基地に戻るのに、海路で二日かかった。
 だが帰ってみると、人の気配が無い。
「鶸ー?」
 暗い洞窟に向かって、茘枝が呼ぶ。
「おられませんな」
 後方で阿鹿が言った。
「そんな…誰も居ない筈は…」
 少なくとも鶸の盗賊仲間だった子供達は居る筈だ。
 どこかに潜んでいるのかと、茘枝は一歩踏み出した。
 その時、背後に人の気配がした。
 無意識に短刀に手が行ったのは、血の臭気を感じたからだ。
「誰だ!?」
 阿鹿の怒鳴りと同時に、茘枝はその人物を見た。
 己の髪の毛以上に鮮やかな赤――血を身に纏った、縷紅。
「――敵じゃないわ、阿鹿」
「しかし、茘枝殿…!?」
 流石に茘枝も戸惑っていた。
「何があったの…?」
 縷紅は、走って来たのだろう、荒い息を整えている。
 服や肌に傷が無数にあった。
「早く――」
 一度言葉を切り、息を吸う。
「鶸達が危ない」
 言いながら一方を指差した。
 茘枝は無言で頷き、その方向へ走り出した。
 縷紅もその後を追おうとした。
「待て」
 それを止めたのは、阿鹿だ。
「何故天の人間が居る?」
「説明している暇は無い」
 言って除けて、再び背を向ける。
「鶸様を危ない目に合わせているのは、お前ではないのか!?」
 風が、血に固まった髪を散らした。
「過言では、ありません――」
「――」
「私は地がどうなろうと構わない――ただ、ここに居るべきでは無かった」
 静かに言って、駆け出した。



 そこは戦地のようだった。
 鶸の仲間と、天の人間が戦っている。
 茘枝は近くに倒れていた少年の手をとった。
 既に脈が無い。
「小さな子供は全員逃がした。囮になる為にここまで来たが――持つのは時間の問題だな」
 茘枝に気付いた男が寄って来てそう教える。
「鶸は!?」
「その辺で戦っている筈だ」
 剣が振り下ろされた。
 男がそれを止め、茘枝が相手を斬る。
 そのまま闘いに身を投じた。
――天に気付かれたか
 組織が大きくならないうちに潰す。そのつもりなのだろう。
 黒鷹を戻さなくて良かったと、茘枝は思った。
 ちらっと鶸の姿を確認した。
 何の心配も無い、いつも通り善戦している。
 ただ、その表情は、悲しみだっただろうか――


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あきゅろす。
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