RAPTORS 7 夕暮れの中、双方の布陣が着々と整っている。 物見櫓からその様子を窺っていた縷紅は、そこから陣の後方へと向かった。 朋蔓を見つけ、駆け寄る。 「どうした縷紅?今回の参戦は禁止だぞ?」 「分かっています。そんな無謀はしません」 肩の傷を押さえて、縷紅は言った。 「一つ、確認がしたくて」 「確認?」 「退却路です」 朋蔓は縷紅に視線を落とす。 見つめ返す紅の瞳がそこにある。 「無論、もしもの時の為ですよ」 「分かっている」 勝ちたい。だが勝てる戦ではない。 「私は二択だと考えています。行くなら、北か南」 「…そうだな」 北――三界山方面に退却すれば、使者を出した本隊との合流が可能になる。ただし、合流した所で勝利に結び付く保証は無い。 南――三界山から遠ざかる事で、本隊の存在に気付かれずに済む。本隊は確実に残せるが、自分達が全滅する事は免れない。 「…南に行けば、入り組んだ地形を利用して、多少の反撃も可能かと」 「お前の中では決まっているのだな」 「…ええ。本隊を巻き込みたくはありません」 「残した所で希望は薄いぞ」 「分かっています。でも、彼ら…黒鷹達なら、何かやってくれそうな気がして」 他力本願ですかねぇ?と笑う。 朋蔓はそんな縷紅に首を振ってやる。 「私も同じ想いだ。運が良ければ挟撃も可能になるかも知れない」 「では、南で」 「そうならない様に努力しよう」 「はい」 視線を前に投げると、天の戦力が続々と到着している。 「――勝ちましょう。皆の為に」 自分に対して呟いた言葉に、朋蔓も深く頷いた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |