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impatient
非公開diary〜溜息

最近、陽高様がやけに憂いを帯びていると思う。

以下は後輩メイドS(仮名・♀)の証言である。


「陽高様、溜息が増えたんです。悩み事があるようなんです。会社で何かあったのか疲れてるのか、私が聞いても教えてくれなくて。亜希さんお願いします、私じゃ力になれないことなのかもしれないので。」


大義名分を手に入れた私は、さっそく陽高様にインタビューに向かった。


「陽高様、最近お元気がないように見えますけど、どうされたんですか?」

「いや…何もない。気にするな。」

「紗奈ちゃんも心配してましたよ。」

「そうか…。」


陽高様は、ふぅと溜息を吐き、遠くを見つめながら、ぽつり呟いた。


「なあ亜希、紗奈をどう思う?」

「紗奈ちゃん、ですか?」


まさか紗奈ちゃんに嫌な所でも見つけたのだろうか。

二人の危機の予感にドキドキしながらも、特に何も思いつかないし下手に答える訳にもいかないので、陽高様の次の言葉を待つ事にした。

すると陽高様はまた溜息を一つ漏らして、口を開いた。



「最近の紗奈は、可愛過ぎると思わないか?」

「……………は?」



恐らく私の目は点状態だっただろう。


「紗奈が可愛くて可愛くて、それだけが悩みだ。」

「はあ…。」

「もう出会ってから1年以上経つというのに、どんどん溺れていく自分が怖い。日に日に可愛くなっていくのだから、心臓がいくつ有っても足りない。紗奈に色々と入れ知恵したのはお前だろう?紗奈が健気にそれを実行する姿は何とも可愛い。」

「……。」

「同性の亜希にはわからないかも知れないが、紗奈のどこがそんなに可愛いかというと全部可愛いのだがやはり一番可愛いのは絶頂に泣き狂」
「そ、それは大変ですね!よくわかりました!では失礼します!」


どこまでも続きそうな陽高様の熱弁を強制終了し、私は駆け足で部屋を出た。

陽高様が真顔であんなに惚気る人物だとは、きっと私以外知らないだろう。

いや。もしかしたら既に誰か他の使用人も餌食になっているかもしれない。



「あ…亜希さん。」


廊下で出会ったSちゃんは、眉毛を八の字にして、私に証言を求めた。


「陽高様どうでしたか?病気とかではないですよね?」

「まあ、あれも一種の病気よねぇ…。」

「えっ!?」

「大丈夫大丈夫。気にしなくていいよ。ずっと治らないだろうけど、害のあるものじゃないから、多分。」

「何ですか?それ。」

「もし気になるなら直接聞いてみなさい。」

「教えてくれないから亜希さんに頼んだのに…。」


そう言ってうなだれる彼女は確かに可愛い。

でもあんな悩み、馬鹿馬鹿しくて私からは言えないね。

だけど誰かに言いたくてしょうがないので、ここに記す事にした次第である。


最後に一言。

一生やってろバカップル。




---Fin

2009/05/25


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