impatient
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潤みきっていた双眼から溢れた涙が、陽高様の寝間着を濡らす。
「ごめ…なさ…っ」
しゃくり上げながら謝ると、宥めるようにぽんぽんと後頭部を撫でてくれた。
「最初から答えていこうか。まず……初めて紗奈を抱いた時から、十分満足していた。寧ろ不安だったのは俺の方だ。」
「え…」
「どうすれば紗奈が一番感じるのか、何をすれば喜ぶのか。紗奈から俺を望むようにする事に必死だった。だが、仕事だから仕方なく抱かれているのかと、不安だった。」
「そんな…。」
陽高様がそんなことを考えていたなんて、全く知らなかった。
目を丸くして見つめる私とは反対に、陽高様は目を細めて柔らかく微笑んだ。
「次に…他の女と紗奈を比べたことは一度もない。」
「嘘!だってさっき…!」
つい熱が入って陽高様の寝間着を両手で掴むと、その手を優しく包まれた。
「さっき?」
「さっき、私のこと…ぬ、ぬれやすい…って。誰かと比べないとそんなこと…」
「ああ…そういう受け取り方もあるな。それが紗奈の気分を害してしまったのか。悪かった。」
陽高様は私の手を持ち上げると、甲や指にキスを授けた。
「ごめんな。少し虐めるだけのつもりだったんだが。」
「いじめって…。…いえ、私こそごめんなさい。」
「いや。…それから、紗奈が誰かより劣っているなど、それこそ一度も考えたことがない。」
「ほんと、ですか?」
「当たり前だろう。」
眉間に寄ってしまった皺の上に、クスッという笑いと共に口付けをされる
「私いつも陽高様に全部任せっきりで、何もできないんですよ?」
「それのどこが悪い。紗奈が異様に慣れていたら、その方が嫌だ。」
「顔だって綺麗じゃないし。」
「紗奈は綺麗というより可愛いだな。敢えて比べるとすれば、世界中の誰よりも可愛い。」
「…言い過ぎです。」
「それから…スタイルだったか?」
陽高様の掌が、ウエストやお尻、胸などを、這うように撫でていく。
「やぁ…」
「俺好みで、しかも反応も良い。文句の付け所がないだろう?」
「ん…っ」
「他に聞きたいことは?」
「ひ、だか様…、っ…不安だった…って…。」
「…そうだな。」
そこかしこを這っていた手と唇が止まったので、私は息を整えながら、陽高様を真っ直ぐ見つめた。
「私…仕事だから、じゃありません。一番最初は怖かったけど、陽高様に…抱かれるの、嬉しかったんです…。」
真剣にそう言えば、陽高様は一瞬固まった後、勢いよく私を抱きしめた。
否、抱き着いたという方が正しいかもしれない。
「陽高様…?」
頬は髪の毛でくすぐられ、首筋では陽高様の吐息を感じる。
「ごめん…紗奈。ありがとう……。」
「…?」
何に対してだか分からなくて返答できずにいると、陽高様は少しだけ顔を上げた。
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