impatient
3
さすがに夕方2時間も仮眠をとると、すっきりしている。
入浴後、日課の読書をし、今日はページが進むなと考える。
そこへ、あのメイドの声。
そんな時間か、と入室を許可する。
現れたのは、制服ではなく、寝間着に替えた姿だった。
昼間からあれだけ側にいて、何も応答せずにいたのだ。さすがに露骨に走ったか、と思わず苦笑いが出る。
彼女を抱くことは問題ないのだが、初めての女の勝手を調べる気が今はない。
よく知っている相手と気楽にしたい気分だった。
一番よく知っている相手といえば…。
「亜希を呼べ。」
「え。亜希さん……ですか?」
視線で肯定すると、目をぱちくりさせたメイドは、不思議そうに返事をしながらベッドサイドの内線をとる。
――おいおい、まさかだろう。――
「そうではなくて。」
予想外の行為に驚き、思わず受話器にかかる手を掴んだ。
「呼んできて欲しい。……話がある。」
「あっ、ごめんなさい!」
そこまで告げて、自分が交代されることに、ようやく気付いたようだ。
鈍感なのか、強欲なのか。
彼女が出て行きしばらく経ってから、メイド服姿の亜希は来た。
「お待たせしました。」
「遅かったな。もう休んでいたのか?」
「あ、はい……。」
亜希はベッド上の俺と話すのに十分な距離まで近づくが、そこから進もうとはしない。
「あの、それで……?」
「? ああ。話というのは、あれを遠ざけるためだ。」
「あれって……。」
動かない亜希に痺れを切らし、身を乗り出して腕を掴む。
短く声を上げる体を自分の上に倒した。
「今日はあまり動きたくない。手間をかけさせるな。」
「え?え?あの……?」
ここまでしても、なお動かない。
困惑顔で眉を寄せるだけだ。
亜希まで鈍くなったのか?
溜息を吐き、しかたなく自分が上になる。
「ひ、陽高様!?」
「服くらい自分で脱げるだろう?」
両側に手をついて囲めば、今までないくらいに目を見開いて、先程と同じように狼狽えながら、守るように腕を構える。
僅かに怪訝に思いつつ制服に手を伸ばすと
「やめてください!!」
声と共に胸板を押される。
亜希自身、思ったより大きな声が出たのか、はっとして口元を押さえた。
さすがにそこまで拒まれては、やる気も失せるが、拒否されたことがないだけに、何故と疑問符が飛び交う。
「どうした。」
「このことは誰にも言いませんから……。」
うつむいたまま、それだけを言うと、足早に離れる。
呆然とする俺を残し、扉は静かに閉められた。
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