Non Stop部屋
1
ザワザワ………────
世の中は何故こんなにも騒がしいのだろうか………
聴覚が捉えているのか曖昧な音………
内で反響して、水の中にいるような感覚に陥る音…………
正確に言えば『声』
恐らく周りの人間は聞こえておらず、気付かないのだろう………
世の中には、こんなに奴等が存在しているというのに────
オォォ………────
意識を向けなければ、ただの騒音。
全ての声を聞いていたら発狂してしまう。
聞きたくなくても耳を塞いで生活するわけにはいかないから
耳障りな『音』を毎日感じている。
水の中にいるような感覚は、
現実世界から抜き取られた空間にいるような錯覚にさえ感じる。
音が作り出す、周りとは違う時間の流れと景色…………
幸い、音の正体が見えるのは右目だけ。
閉じてしまえば、他人と同じように何も見えない…………
存在は肌で感じ、
耳で認識しているが、
見えるのと見えないのとでは雲泥の差だ。
他人には見えないモノが、まともであるはずがない。
けれど、
いつも眼帯で隠している右目は、たまに疼くのだ………
『世界が見たい』………と。
他人と違ったこの右目は、
見えないモノを見たいと欲する………
身体の一部でしかないのに、俺の意思を無視して自己主張する。
何て厄介な右目だ…………
しかし、普段から隠しているから無くても不自由がない右目。
それを潰してしまわない理由は………
見えないモノが、見たいという好奇心がどこかにあるからなのかもしれない────
右目が一番疼くのは、
『人』が多くいる場所だ。
特に病院…………
不特定多数の人が集まり、
多くの人が死んでいるこの場所は、
右目で見れば本当に賑やかだ。
死んだことに気付かないの奴、
未練が断ち切れない奴、
救いを求めにやって来る奴、
勿論悪いモノばかりではない。
最善を尽くしてくれたことに感謝して護ろうとする奴、
ただの井戸端会議場所に集まる奴、
何故他人はこれに気付かないのか分からないくらいに『人』がいる………
しかし病院内は騒がし過ぎるので、隣りにある公園のベンチに座って右目を解放する。
眩しさで目が痛み、すぐには開けないが、徐々に見える世界が変わっていく………
人、ヒト、人………?
決して意識を向けないように、ただ焦点を合わさずに外界を見る。
気付かれると近寄って来て厄介なので、ただただボーッと眺める。
けれど、今日はそれが出来なかった。
「ッ────!?」
意識を向けてはいけないのに、俺は目で追ってしまうくらいに衝撃を受けた。
恐らく他人には見えない人。
しかし、
オレンジ色の髪が鮮やかで、生身の人間と変わらないくらいにハッキリとした姿。
生霊なんだろうけれど、何て穏やかな笑顔なんだろう…………
存在が不思議な『人』に意識を取られた瞬間だった─────
×××××××××××××××
まさかの心霊現象ネタ(笑)
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