Non Stop部屋



















他人には見えないモノが見える特殊な右目。



その右目が捉えたヒト………


ハッキリとした姿。


死んだことに気付かない人間や、この世に強い未練を持った者、強い怨念を持った生霊なんかも鮮明な姿を保つ。

生霊だと思うけれど、あんな穏やかな笑顔をしてるなんてありえないだろ?
じゃあ死んだことに気付いてない死人か………?



何なんだ………?


いや、興味を持ってはいけない。

向こうが気付く前に意識を離さなければ………───





『────………あれ………?』

「ッ!!」



やばい………気付かれた。
今更ながら視線を足元に落とした。



『もしかして………見えてるの?』



その男は一歩一歩近付いてきた。



『こんにちは………って言っても分からないよなぁ』



不思議な男だ。

人ではない『声』は、普段は耳障りな音にしか聞こえないのに………

なんて澄んだ響きのある声なのだろうか。
水の中にいる感覚が、少し心地好いと錯覚してしまうような………



そのままやり過ごすことも出来たのだが、



「………周りに悟られる………」

『え?………声まで分かるの!?』



俺は俯いたまま口元を手で隠して返事をした。

俺はどうかしてる………




『へー珍しい………生身の人間が、見えて聞こえるなんて』



男は俺の隣に腰を下ろし、俺には無関心な素振りをしながら小さな声で話し掛けてきた。



「たまたまだ………」

『そんな能力あると大変でしょ?俺みたいな変なのに話し掛けられるんじゃない』

「まぁな………でも大抵は相手にしてない」

『そっか……相手してくれてありがとう』

「いや………別に………」



俺達は周囲を通り過ぎる人や『人』に気を止められないように言葉を交わした。

気を遣ってくれるなんて

不思議だ…………




俺は右側に座っている男を横目で見た。




本当にハッキリと見える。

自分が霊体だと認識していて、でも笑顔を向けて………


この存在は何だ?




『………ん?』

「ッ………」



視線がぶつかり、思わず目を逸らしてしまった。



『ホントに見えてるだねぇ〜……不思議だなぁ』



声のトーンで分かる。
きっと、目を細めて微笑んでいるに違いない。


そっちからしても俺は珍しくて
互いに不思議がるなんておかしな話だよな。



「…………」



俺はもう一度男の横顔を見つめた。

そして、

男はこちらを向き、無言で視線を交差させた………



端正な顔立ちで

綺麗だ………────




『………綺麗な子だね………』

「え────」



にっこりと微笑む男は同じように考えていたのか?




『周りが騒がしくなってる………気を付けてね』

「…………」



男は立ち上がる。

俺は釣られて男を見上げた。




『俺…………ここにいるから………良かったらまた来てよ』

「あ………あぁ………」

『ありがと…………』




男は踵を返して離れていった。



俺も立ち上がり、歩きながら眼帯を戻した。


今まで見えていた人が半数くらいになり、
見える世界が一変した。



「ふぅ………」



見たり、聞いたりすると疲れがどっと出る。

けれど今回は疲労感より充実感の方が勝った。

ほんの少し言葉を交わしただけなのに………



不思議な男との出会いは、俺の何かを変えていった………─────














×××××××××××××××

意識をそっちに持っていくとかなり疲れます。

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あきゅろす。
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