太陽と月の距離
疑問












「おはようございます!」




朝から幸村のハツラツとした声が響いた。





「おーっす………ニヤけた顔して今日はデートか?」

「え!!」




慶次に指摘されて幸村は顔を触ったが、確かに緩んでいた。




「デートだなんてそんな………ただ食事に行くだけでござるよ」




幸村は嬉しそうにハニカミながらもじもじしていた。



「なぁ幸村………」

「はい?」

「こないだ会った奴とだよな?」

「はい!政宗殿です!」




眩しい程の笑顔な幸村に対して、慶次は苦い顔をしていた。




「あのよ……お前ってそいつ好きだろ?」

「はい……とてもお慕いしております……よ」



ほんのり頬を染めた。



「何かしたいって欲求は……あるのか?」

「え?」

「例えば彼氏になりたいとか」

「そっ……そんな!」




幸村の顔は真っ赤になり、明らかに動揺している不審な動きを始めた。




「そんな……大それたことは……」

「でも好きなら恋人になりたいと思うだろ?」

「それは……」




慶次の投げ掛けた疑問は、幸村の塞いでいる感情を刺激した。




「自分の物にしたいって思うだろ?」

「それは……あの……」

「なぁ………」






慶次はもじもじとして声が段々小さくなってきた幸村に核心を投げつけた。





「抱き寄せたりキスしたりしたいって思うか?」







慶次の発言に幸村は目を見開いた。







「破廉恥ぃぃぃいッ!!!」



幸村の大絶叫が署内に響き渡った。




「耳が………」

「なっなっなんてことを……!」

「いやぁ〜……ちょっと疑問になったからさ〜」



慶次は耳を抑えながら大噴火した幸村に苦笑いをした。



「そんな破廉恥なことはッ」

「でも普通の男なら好きな子にはそれ以上の欲求も抱くもんだぜ……」

「普通?………不埒な考えでは……」

「違う……健全な男なら誰もが求めることだ」

「誰もが…………」

「まぁ……男同士の場合は普通とは言わないけどな〜」

「…………」





慶次の言葉は最後まで幸村の耳には届かなかった。
















───────


(政宗殿と………キ……ス………したいと思ったことはもちろんあるが……そのようなこと某には………)



心ここにあらずのまま仕事を終えた幸村は待ち合わせ場所に立っていた。




「Hey!」

「まっ政宗殿ッ!?」



想い人の声に心臓が跳ね上がった。



「ククッ………お前はいつも声を掛けると身構えるよな」

「不意を突かれて驚いてしまうので……」

「何を考えてるんだか」

「えっ!!もっ申し訳ござらん!」



クスクスと笑う政宗に見透かされたと思い、幸村は深々と頭を下げた。



「何だ………俺に謝るようなこと考えてたのかよ?」

「いや、そういうわけでは……」

「じゃあ何だ?」

「それは………」




幸村は言えるわけもなく、政宗の強い視線から目を逸らした。



「政宗殿は………何故こんなにも男前でお美しいのでしょうか」

「─────ハハハッ!可笑しなことを言うな」



「キスがしたい」と言えない代わりに、嘘はつかずに誤魔化した。



「本当でござるよ!今日もとても………」

「Thanks……お前だって素材はいいんだから少し気を使え」

「某がですか!?」

「あぁ………お前は俺なんかよりも魅力的だ」

「とっ………とんでもない!!政宗殿と比べるなんておこがましい!!」



突然の褒め言葉に動揺してしまった。



「本当だぜ?………俺は1つ欠けてるしな」

「そ………んなことは………」



政宗は自嘲するような笑みを浮かべた。


話題に触れることが出来ずにいる右目のことだろう……



「………政宗殿ッ」



幸村は問い掛けようと意を決した。




「Ah〜……腹減った……お前のお気に入りの飯だから楽しみで腹減らして来たんだぜ」

「ぁ………」



政宗は体を横に向けて幸村の告ごうとしている言葉を拒絶した。



「………はいっ!行きましょう」



政宗の気持ちを汲んで、幸村は問いを心の奥にしまい込んだ………













×××××××××××××××

オマケ


「はぁぁぁあ……………」


佐助は精魂尽きたような溜め息をついた。



「………もうすぐ来ちゃうよ………」



幸村が1人ではなく店に来ることに落ち着かない佐助だった。



(このオカン……何とかならねぇかな)



そんな佐助を眺める才蔵は、前回の山盛りキャベツの二の舞にならぬように、佐助を厨房から追い出したのだ。



「あ………埃が………」



どんよりと負のオーラ充満で細々と拭き掃除をする佐助にイライラが募る。




「…………い……いい加減にしろよ!この姑がぁぁッ!!」




才蔵の怒鳴り声が店内に響き渡った。

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